<開志のまなび>情報学部 ユーザーエクスペリエンス 特別講義「世界的な激動下でのエンタメの可能性について」を開催しました【本学客員教授・橋本真司先生】

2022年11月24日(木)、情報学部において本学客員教授・橋本真司先生(元 ㈱スクウェア・エニックス、現 ㈱ソニー・ミュージックエンタテインメントシニアアドバイザー、㈱フォワードワークス会長)による「ユーザーエクスペリエンス」科目の特別講義が行われました。

今回の講義では、不安定な世界情勢の中でも着実に成長しつづけるエンタメ業界における、コンテンツの展開から、発展するメタバース、そして、この時代における日本、及び日本のクリエイターの可能性まで、幅広くお話をいただきました。

学生時代のアルバイトからエンタテインメント業界へ

幼少期を新潟市で過ごし、新潟地震を経験している橋本先生。大学生時代、徳間書店『アニメージュ』でアルバイトをしたことがエンタテインメント業界への入り口になりました。同誌で様々な記事を書き、バンダイの仕事も手伝っていたことが縁になり、同社に入社します。

「コンシューマーゲーム部門の営業になり、半年間やりました。その後ファミリーコンピュータ用ソフトウェアの宣伝担当に。27歳くらいには、ファミコンの“橋本名人”として、イベント三昧の日々を送りました。地上波のテレビに出てゲーム攻略をやるなど、忙しかったけれど、楽しい時代でした」

スクウェアで感じたグローバルの時代

その後、橋本先生はゲーム会社コブラチームを立ち上げ、スーパーファミコン用ソフトウェア「ジョジョの奇妙な冒険」などを制作。3年後にスクウェアの子会社化に伴い、橋本先生も同社に入社します。

「ファイナルファンタジーシリーズのブランドマネージャーとして、世界中の開発者と話しました。キングダムハーツシリーズを立ち上げ、Ⅲまで携わりました。このとき宇多田ヒカルさんとのコラボレーションをさせてもらいました。日本のエンタメが世界へ進出するための、ひとつの方法として音楽アーティストやアニメ、ゲームとのコラボレーションが必要だと思っています。アジアや世界で活躍しているアーティストを見ればグローバルを前提とした取り組みは当たり前だと言えます」

新たなエンタテインメント分野への挑戦

橋本先生は、2021年にスクウェア・エニックスの取締役を退任。その後、ソニー・ミュージックエンタテインメントのシニアアドバイザーと、子会社のフォワードワークス会長に就任しました。

「ソニー・ミュージックグループは音楽、アニメ、CGなど、様々なメディアミックスによりグループのシナジーが注目される、一気通貫できる会社だと感じています。すばらしいアーティストのマネジメントにはじまり、テレビアニメの企画制作やアプリゲームの企画製作も行っています。ソニーミュージックグループは多彩なビジネスがあり、私も目下勉強中です」

 

変化する時代に日本人の得意分野を

「エンタメの世界は急速に変わっている、進化しなければいけないのです。そのために私たち日本人は得意な分野を究めるしかない。日本の匠はディティールのこだわりがあり、完成度が高い。海外の人はその独自性を参考にしています。匠の技を高めれば、あなたがどこにいようと会社の方からやってきます。広く浅くどこの部署でもつぶしの利く人材より得意を極めた個が生き残り重宝される時代だと考えています」

一点突破型人材の時代

橋本先生は、これからは終身雇用制も難しくなり、総合職のバランス型人材ではなく、一点突破型人材の時代になると考えています。そこでは、しっかりとしたアウトプットを出せることが重要になります。

「あなたの得意技はなんですか? 会社でもフリーでも、グラフィックでも、プログラミングでもアートでも、どんどん高めれば世界から認められます。その反面、アウトプットを出さずに待遇に納得できなくてもしょうがない。一芸に秀でる人間が評価されます。しかし無敵ではない。絶え間ない進化が必要です」

 

メタバースなど等ヴァーチャルワールドの課題

橋本先生は最近話題のメタバースにおいて、重要なのは「そこでなにをやるのか?」、そして、コストをどうするのか、ということだと考えます。

「私が開発したゲームでは会話ができるロビーの延長にゲームを用意していました。そこからチームを組んで挑戦し、ランキングを見て喜び、ロビーに戻って会話して……などなど、その世界の先に“楽しみ”がないとつづかないのです。そして民間企業には収益性が求められます。ここで収益を求めるのか、それとも宣伝に使うのか。不正やバグなど環境インフラを整えるのも仕事。サーバーを管理する優秀なSEも必要です。コストをどうやって回収するか考えなければなりません」

 

大学時代は時間も体力も使って熱中を!

毎年数百億売り上げる日本のヒットアニメは世界を震撼させる、と橋本先生。学生にこんなことをしてほしいと語りました。

「大学の4年間は、時間と体力がたっぷりある状態でものをつくれる時間です。そこで経験を積んでほしい。“24時間熱中していて遅刻しました”は、社会人では許されません。それに若いときに24時間でできることと、30代のそれとは違います。一日の時間を、ちゃんと考えて使ってください」

講義後の意外な発表も

世界中のコンベンションを旅してきた橋本先生。講義後は学生からの質問に答え、“MMOの料金設定ではシミュレーションを行う”ことや、リピーターを増やすためには“「一日で遊びきれない」というキーワードが重要”など、語っていただきました。

また、講義の最後に、当時使用していた橋本名人のジャンパーや入手困難なグッズなど、先生が今まで集めてきた貴重なコレクションを開志専門職大学に展示することが発表されました。

橋本先生、ありがとうございました。

こうした講義の様子は、今後もHPなどでレポートしていきます。

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