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全米大学スポーツの最高峰スタンフォード大学で選手の健康管理を担う。 山田知生氏

スタンフォード大学
スタンフォード大学(英語: Stanford University)とは、アメリカ合衆国カリフォルニア州スタンフォードに本部を置く私立大学。校訓は「Die Luft der Freiheit weht(独:自由の風が吹く)」。サンフランシスコから約60 km南東に位置し、地理上も、歴史的にもシリコンバレーの中心に位置している。
英タイムズ紙の2018年世界大学ランキング(Times Higher Education World University Rankings)ではオックスフォード大学、ケンブリッジ大学につぐ、カリフォルニア工科大学(Caltech)と同率の世界第3位(5位以下にマサチューセッツ工科大学(MIT)、ハーバード大学)に位置する。
ただし、合格率が4.7%(2017年現在)と、アメリカで最も入学が難しい大学となっている。
スポーツの分野においても、スタンフォード大学の各チームは全国的強豪として知られ、これまでの全米大学選手権での優勝数は全米大学チーム中最多の497回に上る。この内、NCAA (全米大学体育協会) 優勝数は全米大学チーム中最多の116回である。(2018年3月時点)

世界大学ランキング2018
・QS世界大学ランキング1位
・TIMES世界大学ランキング(総合):世界第3位

著名な卒業生
ジェリー・ヤン:Yahoo!共同創始者
セルゲイ・ブリン:Google共同創始者
ラリー・ペイジ:Google共同創始者
フィリップ・ナイト:ナイキ創始者、現CEO社長、会長
スティーブン・A・バルマー:マイクロソフトCEO
ジェームス・ウールセイ:元CIA長官
アレハンドロ・トレド:元ペルー共和国大統領
鳩山由紀夫:日本国第93代内閣総理大臣
デレク・ボック:元ハーバード大学総長
デビッド・パッカード:ヒューレット・パッカード共同創始者
スコット・マクネリ:サン・マイクロシステムズ共同創始者
クレッグ・バレット:インテル元会長
レン・ボサック:シスコシステムズ共同創始者
24歳までは日本でプロスキーヤーとして活動していた山田知生先生。その後、一念発起してアメリカへ留学、今は米大学スポーツの最高峰とも言えるスタンフォード大学を舞台に、アスレチックトレーナーとして選手たちの総合的な健康管理に当たっています。すでにプロのスポーツ選手だった山田先生が留学を断行した背景には何があったのか、アスレチックトレーナーになろうと思ったのはなぜか、そしてスタンフォード大学でのキャリアを通じて得たノウハウやスキルを今後、どのように活用していこうとしているのか、恵まれた環境にあるスタンフォード大学構内の野球場に訪れ、その熱い思いを伺いました。
全米大学スポーツの最高峰、スタンフォード大学で 選手の健康管理を担う。彼らの成長過程を間近で見られる喜び。

開志専門職大学

山田先生のお仕事について教えてください。

山田知生

私はスタンフォード大学のスポーツ医局で、スポーツ選手の健康管理に携わっています。

山田知生

彼らがけがをした後のリハビリを指導したり、まずけがを予防するための対策を講じたりといった、選手のためのトータルヘルスケアが私の仕事です。

開志専門職大学

どのくらいの間、スポーツ選手の健康管理のお仕事をされているのですか?

山田知生

今の仕事は20年、スタンフォードの学生選手のためのアスレチックトレーナーの仕事に就いてから17年です。

山田知生

NBA(全米プロバスケットボールリーグ)で活躍しているブルック・ロペス選手とロビン・ロペス選手の兄弟も、彼らがスタンフォード在籍時には私が担当しました。

開志専門職大学

日本の元プロ野球選手の桑田真澄さんとも親交があるのでは?

山田知生

桑田さんもそのお一人ですが、日本のスポーツ関係者がこちらに見学にいらっしゃることは多いです。

山田知生

スタンフォードの施設や指導方法などを見ることが目的で、今年(2019年)の1月にはプロ野球のソフトバンクの工藤監督もいらっしゃいました。

開志専門職大学

日本のスポーツ界のプロフェッショナルも参考にされるほど、スタンフォード大の施設や指導法は世界でもトップレベルだということですね。

開志専門職大学

では、ここで山田先生が選手たちの管理に携わる中で感じるやりがいとは何でしょうか?

山田知生

大学1年でここに入学してくる選手たちは高校を卒業したばかりで、身体的にも精神的にもいわばまだ成長段階にあります。

山田知生

しかし、スタンフォードでの選手生活を通じて、人間として成長していく過程をしっかりとそばにいて見届けられることが私の喜びです。そして何より、その成長していく過程に自分が携われることにやりがいを感じます。

山田知生

さらに社会に巣立った彼らが活躍している様子を見ると、さらに大きな喜びを感じます。人間は小さな子どもの間だけでなく、何歳になっても成長できるのだということを確認することができます。

開志専門職大学

スタンフォード大学で選手の指導に当たるようになったきっかけは?

山田知生

カリフォルニア州のサンノゼの大学院を卒業した後、働きながら、アスレチックトレーナーの資格を取得しました。

山田知生

その時にスタンフォードのイベントに参加して、大学関係者と知り合ったことがきっかけになりました。アメリカでは「誰を知っているか」が重要なんです。

24歳までプロスキーヤー。その後のキャリアを考えた時 「アメリカで大学に行こう」という考えが浮かんだ。

開志専門職大学

ネットワークが大事なのですね。では、さらにさかのぼって、なぜ、山田先生はアメリカに留学して来たんですか?

山田知生

私はもともと日本で高校を出た後、プロスキーヤーをやっていたんです。21歳の時に遠征でアメリカのコロラドとユタに来て、地元の大学に通いながらスキーをやっているアスリートたちと話した時に、彼らの見識が広いことに驚かされました。

開志専門職大学

どういうことですか?

山田知生

日本の多くの選手はスキーの話しかしませんでした。しかし、アメリカの選手たちは知識も豊富で、政治、科学、音楽、哲学、アートなどの話もしていました。そこに違いを感じたんですね。

開志専門職大学

それでアメリカの大学に来ようと?

山田知生

日本では高校卒業後すぐに大学に行かなかったら、もう(進学の)チャンスはないと思い込んでいました。今はそんなことはないでしょうが、27年前の話です。

山田知生

だから、22か23の頃、スキーの次に何をしようと考え始めたときに、アメリカで大学に行くのはどうだろうというアイデアが自分の中で浮かんだんです。

開志専門職大学

英語は得意でしたか?

山田知生

いえいえ、聞くのは割とできましたけど、自分から話せるのは買い物のときの「これ、いくらですか?」程度です。

山田知生

それでまず、TOEFLのスコアを伸ばすことに取り組みました。それから家が(米軍)横田基地に近かったので、出かけて行ってアメリカ人の友達を作ったりもしました。

開志専門職大学

そして、ついに留学?

山田知生

はい、1992年、インディアナ州立大学ヴィンセンス校付属の英語学校にやって来ました。

開志専門職大学

インディアナというと日本人は少なかったですか?

山田知生

当時はバブル景気で、結構、日本人が留学して来ていました。学校に100人くらいいましたね。でも、最初から英語だけの生活だったら私には厳しかったと思います。日本人が周囲にいてくれて助かりました。

開志専門職大学

英語学校ではどのように英語の勉強を?

山田知生

会話でわからない単語が出てくるとすぐに調べたり、映画で字幕を見ながら言っていることをメモしたり、地道に努力しました。特別なことはしていないと思います。日本にいた時の方が勉強していたかもしれませんね(笑)。

アメリカの良さは「ダイナミック」の一言 自分の判断で動ける、しかし同時に大きな責任も伴う。

開志専門職大学

その後はどこへ?

山田知生

マサチューセッツ州立ブリッジウォーター大学に入学しました。そこでは最初、ジャーナリストを目指していたんです。戦地に行って写真を撮って伝えるようなことをしてみたいと憧れていたんですね。

開志専門職大学

では、途中で進路変更したんですね。

山田知生

そうです。スポーツのイベントにボランティアで参加した時に、そこで活躍しているアスレチックトレーナーの人たちを見たんです。

山田知生

私は以前、スキーヤーとしてトレーナーにお世話になる立場でした。でも、その時に今度は自分がトレーナーになって選手のために役に立つというのはすごくいいことなんじゃないかと思えてきたのです。

開志専門職大学

さて、アスレチックトレーナーとしてアメリカで20年の経験を持つ山田先生が見るアメリカの魅力とは?

山田知生

「ダイナミック」、この言葉に尽きますね。自分の判断で動ける、しかし、同時に責任も伴います。自由に好きなことをやらせてもらえるけれど、その分、自分がやったことや言ったことに責任が付いてきます。

山田知生

例えば、大学に提案する際に、「それをやる目的は何か、そしてやった後に何を得られるのか」という具体的な情報を盛り込んで提案書を提出します。そうすると、その内容によっては大きな予算を獲得することもできます。

開志専門職大学

目的や得られるものをアピールすることで、新しいドアが開くのですね?

山田知生

選手のトレーニングに新しい機械が必要な場合、ものによっては4万ドル(約400万円)や5万ドル(約500万円)かかることもあります。

山田知生

しかし、その必要性を実感してもらえたら、私の上司、またはさらに上の上司が、寄付してくれる人を探し出してくれます。そうなったら、こちらもいただいたもの以上の結果を出そうと一生懸命になるというわけです。

山田知生

この球場だって、最初は1000人しか観客が入らなかったのに、もっといい施設にしたい、もっと多くの人に(試合を)見てほしいと、3000人、さらに今は5000人を収容できるまでになりました。芝生だってきれいにしましたしね。

開志専門職大学

確かにスタンフォード大学のスポーツ施設は素晴らしいですよね。

山田知生

フットボールスタジアムは6万5000人の観客を収容できます。人を呼んで、見てもらって、スポーツをもっともっと盛り上げていこうという発想です。さらに(入場料を取って)観客を入れることで使った分も取り戻せます。

アスレチックトレーナーとしてのポリシーは 選手と一人の人間として向き合い、彼らの言葉に耳を傾けること。

開志専門職大学

アメリカの大学スポーツの最前線に山田先生はいらっしゃるわけですが、日本人としての特性や長所を挙げていただけますか?

山田知生

一昔前は、日本人は真面目で忍耐強いというイメージがあったかもしれません。しかし、私が考えるに本当にプロフェッショナルなアメリカ人は真面目だし、忍耐強いです。

山田知生

どんなことがあっても顔に出さずにプロとしての仕事に取り組みます。日本人だから、アメリカ人だからということはないのではないでしょうか。

開志専門職大学

では、山田先生自身のアスレチックトレーナーとしてのポリシーを聞かせてください。

山田知生

選手の話を聞く、ということです。一人の人間として向き合い、性格を把握し、彼らのどんな言葉にも耳を傾け、そして自分から発する言葉には細心の注意を払います。しかし、それは私に限ったことではないと思いますよ。

開志専門職大学

選手から時間外に電話がかかってくるのですか?

山田知生

テキストメッセージで「体が痛くて眠れない」と深夜に連絡が入ったりしますね。そういうときは朝一番でその選手の様子を見るようにします。

開志専門職大学

この仕事をずっと続けていきますか? 山田先生の将来の夢は何でしょう?

山田知生

実は少し違ったキャリアを考えています。それは学校経営です。欧米の学校と比べると、日本では教わらないことがたくさんあります。

開志専門職大学

どういうことですか?

山田知生

ディスカッションする力、スピーチ力、アクティブラーニング、クリティカルシンキング、そしてリーダーシップ、これらを身に付けることが今の日本の教育システムの中では難しいと思います。

山田知生

社会の抱える問題を解決できるような個人に育つ、そういう教育を日本でも実践したいと思っています。具体的にはいじめ、働き方改革の必要性、男女間の差別といった日本の問題の解決に少しでも役立てる人材を育てたいです。

日本の社会を変革できる人材を育成したいという熱い思い 問題に対して自ら行動し、積極的に解決に携われる人に。

開志専門職大学

日本の社会を変革できる人材の育成ということですね。

山田知生

そうです。誰か困っている人、悩んでいる人がいたとしたら、それを他人事だと思わず、何も行動しないのではなく、積極的に解決に携われるような、そういう心を持ち、行動できる人になってほしいです。

山田知生

日本の教育は、きちんと規則を守る人間を育成できるといった素晴らしい側面もあります。今ある良さに、私が思う欧米の教育基準になっているコミュニケーション教育を織り交ぜた学校を作りたいというのが夢です。

開志専門職大学

その学校は小学校ですか?

山田知生

小中高の一貫校です。公園の横に保育園を開設するところからスタートしてもいいです。そして、プロのスポーツ選手にもなれるけど、大学にも進学できる、海外の大学にも留学できる、そういった学校にしたいです。子どもの可能性を限りなく広げる学校を開きたいと考えています。

開志専門職大学

日本の社会を変えたいということでは、山田先生は本も出されたんですね。

山田知生

去年の今頃、日本の疲労社会を変えられたらという気持ちを込めて、疲れない体にするためのヒントを満載した本を出しました。アマゾンではビジネス書のカテゴリーで1位にもなり、「ビジネス書グランプリ2019」にもノミネートされました。

開志専門職大学

そんな山田先生が開志専門職大学で特別講義をされる際には、どのようなお話をしていただけるのでしょうか?

山田知生

私自身のシリコンバレー(スタンフォード大学がある場所)での経験も生かしながら、これから20年の先を見越して、学生の皆さんに今からこういうことを考えて実行に移すといい、というアドバイスをさせていただきたいと思います。

山田知生

それに付随して専門的なことを身に付けてほしいというメッセージも送りたいです。大学1年生や2年生の時期には人間力を鍛えること、そして、その先で何を専門にすべきかを見付けてください。

山田知生

私もそうでしたが、専門分野に関しては先を急ぐ必要はありません。見つけたら、じっくりと取り組めばいいのです。

開志専門職大学

開志専門職大学での特別講義、とても楽しみです。日本社会を変えるような人材に成長できるヒントを、学生に少しでもお聞かせいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

特別講師 山田知生氏
スタンフォード大学スポーツ医局アソシエイトディレクター

東京都出身。24歳までプロスキーヤーとして活動した後、アメリカに留学。マサチューセッツ州立ブリッジウォーター大学をアスレチックトレーニング専攻で卒業後、サンノゼ州立大学院でスポーツ医学とスポーツマネージメントの修士号を取得。2002年秋よりスタンフォード大学アスレチックトレーナーに就任。2018年に日本で発行した『スタンフォード式疲れない体(サンマーク出版)』はアマゾンビジネス書ランキングで1位を記録。

インタビュー:福田恵子
撮影・動画:阿部陽二

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