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「面白い」と感じることが原動力。チャンスと思ったら直感的に行動してほしい。 早坂昌彦氏

ハウステンボスで「変なホテル」の立ち上げに携わるなど、新規事業を数多く手掛けてきた早坂昌彦さん。大学の准教授を経て、現在はJR東日本で「ワーケーション」の推進に携わる早坂さんに、これまでに関わってきた事業から今取り組んでいる仕事、高校生へのアドバイスまで、たっぷりお話していただきました。
国家公務員からビジネスの場へ。人との出会いが一番大事。

開志専門職大学

さまざまな仕事をしてきた早坂昌彦さん、それぞれのお仕事について教えてください。

早坂昌彦

大学を卒業するにあたって、広く世の中に関わっていきたいと考え、国家公務員を、その中で経済に興味があり、通商産業省(現・経済産業省)に就職しました。

早坂昌彦

そこで働くうちに、もっと個人として、1プレーヤーとして経済に関わりたいと思うようになりました。

開志専門職大学

そして、民間での仕事に就く前に、留学したと伺いました。

早坂昌彦

はい、ボストンに行く機会があり、そこに留学していた友人に大学を案内してもらったのですが、そこの雰囲気を味わった時に、「これを知らずに歳を取るのはマズイな」と直感的に思ったのです。なので、「まずは留学だな」と決断しました。

早坂昌彦

イギリスのマンチェスター・ビジネススクールに留学しました。これが初めての海外生活でした。

開志専門職大学

思い切った決断だったのでは?

早坂昌彦

はい、家族も友人も、自分以外全員反対でした(笑)。

開志専門職大学

その後は日本で就職されたのですか?

早坂昌彦

はい、日本のベンチャー企業です。イギリスでの就職イベントで、その会社の創業者の方にお会いして、「公務員の甘えをぶち壊してやるからうちに来い」といったことを言われのです。

開志専門職大学

すごい社長さんですね(笑)。

早坂昌彦

今振り返れば、その頃の僕は理論偏重だったのだと思います。でも人との出会いが一番大事、ということを、その後になって学んでいきました。自分一人でできることは大したことはなくて、人との話で気付くことのほうが圧倒的に多いと思うのです。

開志専門職大学

そこではどんなお仕事を?

早坂昌彦

「会長秘書兼新規事業部」というところで、新しい事業をどんどんやっていく仕事でした。新規事業にはリスクがあるので、トップがどんどん旗を振って進めていかないといけないのです。

早坂昌彦

そういう新規事業を任されて、具体的には、各会社の中の総務・作業のような仕事をまとめて引き受ける、アウトソーシング事業をベースに、新しい事業を企画して立ち上げるということを行っていました。

テーマパーク再生を担う。チャンスと思ったら直感的に行動に移す。

開志専門職大学

その後、ハウステンボスに移られたのですね? きっかけはどんなことだったのでしょうか?

早坂昌彦

ちょうど2011年、東日本大震災のあった年でした。私は被害の大きかった福島県出身で、自分が復興にどう役立てるか、考えていた時期でもありました。

早坂昌彦

そんな中、ハウステンボスを運営していた、旅行会社H.I.S.創業者の澤田秀雄さんに出会ったのです。「オープンから18年間ずっと赤字が続くテーマパーク・ハウステンボスを立て直す。それも100億円の利益を目標にしている。面白いだろ?」と言うわけです。

早坂昌彦

僕にとっては、澤田さんという人間と一緒に働くこと、地方(長崎県)という地理的に不利なところで働くという経験を、ゆくゆくは地元・東北に還元できるのでは?と考えたのです。

開志専門職大学

その後「変なホテル」の立ち上げに関わったのですね?

早坂昌彦

実は入社後すぐは、澤田さんには「慌てなくていい。まずは会社や人を理解していけばいい」と言われていたのです。

早坂昌彦

接客をしたりチラシを配ったり、ハウステンボスというテーマパークのオペレーション業務を1年ぐらいやっていました。そうやって現場を見たからこそ、会社の課題なども見えてきました。

開志専門職大学

「変なホテル」といえば、ロボットの接客が話題になりましたよね。プロジェクトはどうやって生まれたのでしょう?

早坂昌彦

実は、最初から「ロボット運営」というコンセプトだったわけではなく、澤田さんから課せられたのは「世界一生産性の高いホテル」というものでした。「建築、エネルギー、人、それぞれにかかる費用を最小にすれば、生産性が高くなるんだ。それをハウステンボスでやりたい、ちょっとよろしく」と言うわけです。それがスタートでした。

早坂昌彦

そこで最初に思いついたのは「完全無人ホテル」というアイデアでした。それを提案したら、「それじゃ寂しいだろ。人は賑わいに集まってくるんだよ」と言うのです。「生産性を高めると言っていたのに、突然そんなことを言うのか」、と正直思いましたね(笑)。

開志専門職大学

生産性と賑わいの両立、ということでロボットに至ったのですね?

早坂昌彦

そういうことです。最初は「スマートホテルプロジェクト」と呼んでいて、「シンプルでスマートなホテル」がコンセプトでした。そこから行き着いたのがロボットでした。

早坂昌彦

とはいえ、私にはロボットの知識もなければ建築の知識もありませんでしたから、専門家に聞いて回りました。

早坂昌彦

今振り返ると、一流の方は、「面白いね、会って話をしましょう」と言ってくれる方が多かったと思います。「世界一のものを作りたい」というコンセプトに興味を持ってくれたのかなと感じています。掲げるビジョンが大事で、ビジョンを掲げたところに人が集まってくるのではないでしょうか。

開志専門職大学

そこから「変なホテル」はどんどん軌道に乗っていくわけですね? そんなハウステンボスから次のステップに進むきっかけは何だったのでしょう?

早坂昌彦

ハウステンボスで働く一番の理由は、澤田さんの下で働くということでした。そんな中、2019年澤田さんが退任すると発表したのです。それで、自分もそろそろここは卒業するときかなと考えました。

開志専門職大学

その後は大学で先生をされていたのですね? そのきっかけは?

早坂昌彦

長崎国際大学という、ハウステンボスのすぐ近くにある大学で、理事長の安部さんと、もともとプライベートで交流がありました。

早坂昌彦

ハウステンボスを退職するころに、その安部さんに「一企業のためには働いてきたかもしれないが、この佐世保の地域に役立つことはしてきたのか」「地域の学生に貢献することをやってみたらどうか」と言われたのがきっかけで、教員の公募に手を挙げることにしたのです。

開志専門職大学

ここでも人とのつながりがきっかけだったのですね。どんなことを教えていたのですか?

早坂昌彦

観光事業論という授業などを担当していました。具体的には、観光をビジネスの視点で捉えた時に、地方がどうやって企画をしていったらいいかということ。大都市の人や海外の人に、よく知らない地方に来てもらうには、フックとしての尖った企画が必要で、そこでしか見られないものを作ることの重要性などを教えていました。

開志専門職大学

それまで民間で働いて、教育の現場に移って感じたことはありましたか?

早坂昌彦

やはり全く違いますね。ビジネスでは、お互いが目的を持って人と接しますから、興味がなければそこで終わり、「ではまたの機会に」となります。でも大学は、学生はまっさらな状態で入ってきて、そこから進路を決めていく。

早坂昌彦

例えば1年生に話をしても、その時にはピンと来ないこともある。でも半年後、2?3年後になって気付きがあるかもしれない。だから「話したことを、頭の片隅に残しておいてほしい」と思うようになりました。

開志専門職大学

なるほど、苦労したことも多かったですか?

早坂昌彦

授業では、一人の教師が複数の学生に話をするので、伝わっているのかどうか分からないこともありました。そこで、授業の後にアンケートを取ったり、ゼミでは一人ひとりと話をしたりしました。

早坂昌彦

そうすると、予想外の反応が返ってくることもあります。表面上、反応が薄くて「興味がないのかな」と思っても、実はそうでないことがあることに気付かされました。

早坂昌彦

これは本当にいい経験でした。今まで自分自身、先頭に立って引っ張っていくスタイルでやってきました。でも、周りに若手のスタッフが増えてきて、年の離れた部下・後輩もいます。そういう人たちと仕事をしていく上で、大きな気付きになったと思っています。

従来と違う需要をどう生み出すか。よりスケールの大きな仕事を求めてJR東日本へ。

開志専門職大学

大学で1年半教壇に立った後、今のJR東日本に転職されたのですね?

早坂昌彦

はい、それまでは一地方でのビジネスに貢献してきたわけですが、さまざまな地方に貢献するというテーマで、よりスケールの大きな仕事をしたい、できるのではないか、と思うようになったのです。

開志専門職大学

なるほど。具体的に今の仕事はどんなものでしょうか?

早坂昌彦

事業創造本部というところで、「ワーケーション」を推進する仕事をしています。

開志専門職大学

ここでもやはり新規事業に関わっているのですね。

早坂昌彦

はい。もちろん鉄道会社ですから、今ある鉄道をしっかりメンテナンスして、それを続けていくのは大切なことです。一方、ビジネスとしてのこれまでの鉄道業は、人口が増えること、多くの人が通勤や通学で利用することが前提になっています。

早坂昌彦

昨今のコロナウイルスの影響もあって、その前提となるビジネスモデルが変わっていこうとしていますよね。そこで、これまでとは違ったビジネスを、これまでとは違ったスタイルで進めていくことが必要になってきているわけです。

開志専門職大学

「ワーケーション」は最近出てきた言葉ですよね。どういうものでしょうか?

早坂昌彦

「ワーク(Work)」と「バケーション(Vacation)」を掛け合わせた言葉で、「平日の、比較的空いているタイミングで観光地などに行き、そこで仕事をする」という働き方です。

早坂昌彦

もともと観光地というのは、忙しい時期(繁忙期)とそうでない時期(閑散期)の差が激しいのですが、ワーケーションが広がってそれを平準化できれば、旅行・交通の業界にとってはメリットになります。

開志専門職大学

導入予定の企業はどんなところがありますか?

早坂昌彦

日本航空(JAL)、全日空(ANA)などの航空業界、また三菱地所といった企業は、コロナ以前からワーケーションを検討していて、まずはそういったところと意見交換することから始めました。

開志専門職大学

ワーケーションには、企業側・働く側それぞれにどんなメリットがあるのでしょうか。

早坂昌彦

大きくは二つあって、一つ目は「ウェルビーイング」という考え方です。「人として幸せな状態だと、会社での生産性向上にもつながる」ということ。移動距離と幸福度には相関関係があるという研究があって、いろいろなところに行って働くことはパフォーマンスに好影響なんですね。

開志専門職大学

移動距離と幸福度、面白い相関関係があるのですね。

早坂昌彦

もう一つは「イノベーション人材」という観点です。自分の中に「ダイバーシティー(多様性)」を作ることで、いろいろなアイデアが生まれてきます。日常ではないところに身を置く、ということが個人、会社としてのイノベーション力も上げる、という考え方です。

開志専門職大学

今後どのように取り組んでいくのでしょうか?

早坂昌彦

「お試しで導入してみませんか?」と、まずは東京に本社を置く大企業に働きかけています。大企業の方が体力もありますし、分業されているのでやりやすいだろうということが理由です。2021年7?9月に、お試しでということで、東京からも近い軽井沢でのワーケーションを提案しています。

「面白い」と感じることが原動力。解決すべきお題を認識することから始まる。

開志専門職大学

「新規事業」ということで、過去にない新しいことにたくさん挑んでいますが、その原動力は何でしょうか?

早坂昌彦

まずは「お題」、つまり課題があることがスタートです。私の場合、「こういうことをしたい」「こういうビジョンでやっていきたい」というお題を出してくれる人が起点になっています。問題がそこにあることの認識から始まるのです。

早坂昌彦

それに対して、「面白そう」とか「いい意味で大変そう」という感覚を大事にしているつもりです。

開志専門職大学

昔からそういう考えを持っていたのでしょうか?

早坂昌彦

そうですね、これはもう性格なのかなと思うのですが、無理難題に向き合うのが好きなのかもしれません。高校のテストで、学校の「定期テスト」と、難しい問題が出る「学力テスト」の2種類があったのですが、「学力テスト」のほうに俄然やる気が出たりして(笑)。

開志専門職大学

特別講義の内容について簡単に教えてください。

早坂昌彦

私が携わってきた新規事業の経験から、新規事業立ち上げの発想法について話したいと思います。すでに社会人向けに話したことがあるのですが、これを大学生向けにアレンジしてお話ししたいと思います。

早坂昌彦

みなさんの高校でも、新しいプランを出すような授業があるかもしれませんが、もっと大事なのは、そのアイデアをどうやって形にするか、実現するかです。しかし、それは教えにくいというか、教えている人はあまりいないと思います。

早坂昌彦

それはいきなりできるわけではないですし、一人でできることでもありません。会社で事業をする上ではいろいろな問題も出てきますから、その問題を解決する必要も出てくる。こういった、問題解決のさわりについて、特別講義で話したいと思っています。

開志専門職大学

最後に、学生たちに伝えたいことはありますか?

早坂昌彦

大きく二つあります。一つ目は「矢印を自分ではなく外に向ける」ことの大切さです。「自分はもっとすごいのに」などと自分に矢印を向けるとつらくなってきます。「どうしたら周りの役に立てるのか」という考えにしていくといいと思います。それにはエゴを消さなければいけない、そこが難しいところでもあります。

早坂昌彦

そしてもう一つは、身体を鍛えることです。自分自身が健康でないと、人に働きかけるエネルギーも出ませんよね。だから、自分のできる範囲で身体を鍛えることは大事です。

早坂昌彦

また身体と会話をすることで、自分のできること・できないこと、限界も見えてきます。考えているだけではもやもやしてしまうことも、実際に身体を動かしてみると、そのバランスが分かってくることもあります。

開志専門職大学

ありがとうございました。特別講義で会えるのを楽しみにしています!

特別講師 早坂昌彦氏
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
事業創造本部

1973年福島県いわき市生まれ。
1995年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、経済産業省に入省し、地方の産業振興策の立案等を担当し、2001年に自ら産業のプレーヤーになりたいと考え退職。
2003年に英国マンチェスタービジネススクールにてMBA取得後、ベンチャー企業等で主に新規事業の立ち上げを担当。
2011年に佐世保のテーマパーク・ハウステンボスに入社し、取締役事業開発室長として、世界初ロボットで運営されるホテル「変なホテル」の企画・開業責任者を担当。
2019年に長崎国際大学 国際観光学科の准教授に就任し、「観光事業論」等の科目を担当。
2021年に東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)に入社し、現在は事業創造本部にて「ワーケーション」の推進などを担当している。

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