開志専門職大学ならではの講義や学習プログラム、学生のユニークな取り組みをご紹介する<開志のまなび>。今回は、株式会社LATEGRA 取締役/株式会社ライブストリーミング・ジャパン代表取締役の杉本誠司氏を講師に迎えて実施した「トップランナー研究」のレポートをお届けします。
情報学部で行われた講義のテーマは「デジタル社会とイノベーション」。コロナ禍により、ますます進化が加速するデジタル社会で、革新的なサービスやプラットフォームを創出する考え方のヒントを教えていただきました。
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“コンテンツで遊ぶ”文化を生んだ「ニコニコ動画」の立ち上げ
インターネットの黎明期から、デジタル業界におけるさまざまな事業でキャリアを積んできた杉本誠司さん。キャリアの原点となったのは、当時日本ではまだ浸透していなかったオンラインゲームだったといいます。
「ゲームの画面の中に自分のキャラクターがいて、同じように他のキャラクターにも人格がある。今では何でもないことですが『画面の中に世界がある。この中で生きている、生活している人がいるんだ』と思いました」。
それをきっかけに、当時オンラインゲーム事業を展開していた「ドワンゴ」の門を叩いたところ、思いがけず着メロ事業に携わることに。
「そこで気付いたのが、供給する側は着メロをコミュニケーションツールと捉えていたこと。たとえば人気アーティストの新曲を着メロにしていたら『あ、それ知ってる』と会話が生まれますよね。コミュニケーションを誘発して人と人をつなぎ、会話が広がり、コンテンツが広まっていくという仕組みを知りました」。
オンラインゲーム、着メロと、デジタルコンテンツを通じたコミュニケーションに興味を持った杉本さん。続いて取り組んだのが、「ニコニコ動画」の立ち上げでした。
2006年に登場し、当時のインターネットを席巻したニコニコ動画。今となっては懐かしいもの…と思いきや「今でもよく見てる人?」という質問に手を挙げる学生も少なくありませんでした。
「当時のニコニコユーザーは『弾幕』に代表されるように、動画上でコメントを交わすこと、人のコメントを見ること・見せることを楽しんでいて。アニメや音楽など、大喜利としてネタになるものが再生回数を伸ばし、盛り上がっていきました」。
ユーザー同士でコンテンツを楽しむことに重点が置かれ始めたことに注目し、コミュニケーションサービスを充実させていった結果、ついにリアルイベント「ニコニコ超会議」を実施することに。ニコニコ動画に由来するコンテンツを体感できるこのイベントは、最終的に幕張メッセで約10万人を動員する規模へと成長。斬新なゲストやステージイベントも大きな話題となりました。
「当時は『どんどん新しいことをやっていこう!』という気持ちが強かったんです。もちろんサービスは考え抜いて作っていましたが、ちょうど「ネットを使ったコミュニケーション」が、エンドユーザーに刺さった時期だった。ニコニコ動画は動画視聴サイトながら、半分SNSのようなものだったので、時勢の後押しがあったんです。事業を行う上で、タイミングも重要だと実感した時期でした」。
その後も通信制高校「N高校」のカリキュラム構築、ライブアプリ企業の立ち上げといったキャリアを重ね、現在は2社の取締役を兼任。主に中国市場でVR・ARの技術を駆使した映像演出を手掛ける「株式会社LATEGRA」、舞台やコンサートなどをライブ視聴できるサービス「BARON STREAM」を運営する「株式会社ライブストリーミング・ジャパン」で、デジタル技術を駆使した仕組みや新たな体験を生み出し続けています。
変化する社会で、イノベーションを生み出す考え方とは?
続いて学生に向けて語ってくれたのは、本日の講義テーマ「デジタル社会とイノベーション」につながる「イノベーションを起こすとは何か」ということ。
ネット社会を捉えるキーワードやイノベーションを生み出す上での課題など、さまざまな考え方のヒントを教えていただきましたが、常識を破って新しいことを始めるには、考え方を習慣付けることが重要だといいます。
「イノベーティブとは便利なこと、新しいことですが、変わったことだけを考えるのではなく『社会にどういった機能を提供できるか?』を検討することが重要。新しいものを思いついた時『これを誰かに面白がらせることができるよね』と言える人はほとんどいません。自分だけでなく、誰かがそのアイデアを面白いと思ってくれるか?という視点がないと、新しいことを生み出すのは難しいと思います」。
また、コロナ禍で世界全体が変わった今こそ、これまでの常識を破ってイノベーションを生み出すチャンスだと話す杉本さん。
「変わった世の中を元に戻すのではなく、前より良くしていかなければいけません。『復興』ではなく『変革』するというマインドを持ってほしい。誰にでも機会は訪れますが、気づくか気づかないかはその人次第。何か思いついた時『やめとこうかな、めんどくさいな、リスクがあるな…』と思った時が、その兆しです。好機を逃さず、周りから『おかしいよ』と言われるようなことを、臆さず実践していってください」。
学生が考える、未来のデジタルサービスを発表
講演後に行ったグループワークのテーマは「イノベーティブなデジタルサービス、デジタルビジネスを創造(デザイン)してみる」。
「奇をてらう必要はないので、楽しみながらディスカッションしてください。イノベーションを起こせるアイデアの必須条件は①見たことも聞いたこともないこと、②実現が可能なこと、③物議を醸すことだと思いますが、中でも②が難しい。実現する際の課題についても考えてみてください」。
グループディスカッションを終えて、チームごとにアイデアを発表。毎朝の服選びやメイクをサポートしてくれる「パーフェクトミラー」、道端で困っているお婆さんを助ける「オーバーヘルプ」、思い出や知識をすぐに取り出せる「記憶のクラウド化」…など、個性豊かなビジネスプランが登場しました。
中でも、亡くなった家族や歴史上の偉人と話せる「死者に会えるサービス」というアイデアには、杉本さんから
「自分も以前、似たようなプランを思い付いたことがあって…(笑)。いろいろと問題はありますが、クリアできることもある。リアリティのあるアイデアですね」
といった感想を頂きました。
発表を終えた学生に向け、最後に杉本さんからコメントが。
「どのグループもすごく面白かった。本当にできるのかな?というものもありましたが、今の段階ではこれで十分。この考え方を癖にして、遊び感覚で続けてみてください。あとは、小説・漫画・アニメーションや映画など、ほとんどの技術開発がSFを追いかけています。既存の答えではありますが『このアイデアはいいな』ということを見つけて実現するのはすごくイノベーティブだし、面白いと思う。この中から創業者が現れるかもしれないし、全員がなったっていいんです。がんばってください」。
「トップランナー研究」では毎回、ゲスト講師から学生へ事前課題が与えられますが、今回の課題は映画『マトリックス』の視聴でした。
「非現実的なSF、ファンタジーの世界観ですが『こういうことが現実で起こったら驚くだろうな』と思ったんです」と杉本さん。
革新的なアイデアの原点ともいえる作品に触れてから参加した、エネルギーあふれる講義。学生たちにとって、新たな発見や刺激につながったのではないでしょうか。
ゲスト講師の貴重なお話を聞くことで、ビジネスに必要な力を高める「トップランナー研究」。
今期の講義はこれで最終回となりました。来期も開志専門職大学では、さまざまな企業のトップランナーが登場する予定です。
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