2021年度から始まった開志専門職大学の取り組み「土曜講座」。本学の客員教授・特別講師をはじめ、各分野の第一線で活躍する方を講師に招いて特別講演を行うことで、学生のみなさんの現代経済への理解を深め、日々の学習意欲へとつなげる取り組みです。
今回の記事では、11月27日(土)に行われた第6回 土曜講座の模様をレポートします。
今回のテーマは「夢とチャレンジ」。講師は、元トヨタ自動車株式会社代表取締役社長、九州ファイナンシャルグループ社外取締役、そして本校客員教授でもある渡辺 捷昭さんです。
社会や経済の情勢について考えること、55年に渡るトヨタ自動車株式会社での体験談、そして学生たちに期待すること。この3つを講座の核にお話いただきました。
学んでいく上で、意識してほしい5つのこと
新型コロナウイルス感染拡大によって変わっていく「社会環境」、「先進的な日本の少子高齢化」、環境保護と経済成長を両立する「GX(グリーントランスフォーメーション)」とビジネスの可能性を広げる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。そして、世界に通じる学びの重要性を唱えた「知性学」。この5つのカテゴリーを頭の片隅に置き、学ぶ上でも意識してほしいというお話から講演はスタート。
「情報通信の発達により、世界は狭くなっています。新潟でも、日本でも、アジアでもない。これからの相手は、世界です!」。
最初の配属先は、人事部厚生課給食係
慶応義塾大学で経済学を学び、トヨタ自動車株式会社に入社した渡辺さん。期待に胸を膨らませながら人事の言葉に耳を傾けると、そこから発せられたのは「リザーブ用員」という、聞き慣れない言葉でした。
「配属先は、いまだかつて大卒者が席を置いたことのない給食係…正直、興味もやる気もなかったですね」。
3日間悩んだ末、職場でもある食堂へ。与えられた仕事もなく、ただ見ているだけでは飽き足らなくなった渡辺さんは、データ収集を行うことに。偶然か必然か、このことが起点となり、当時社内導入されたQCの対策メンバーの一員に抜擢されました。
「仕事に基線はない。どこに配属をされても、その場所での発見能力=気づきが仕事のスタートになると実感しました」。
入社当時、トヨタ自動車の年間生産台数は約30万台。現在はその30倍ともいわれ、「世界のトヨタ」と呼ばれるまでに進化しました。渡辺さん自身、数々の困難に直面しながらも、常に念頭にあったのはチーム力。
「私たちにとっては1/1000万台でも、お客様にとっては1/1台です。だからこそ、現場が強くなければいけないのです。その現場の結束力を高めるためには、直接話を聞くことが大切。現場にきちんと目線を向け、現場の声を聞く。それを踏まえ、レベルを合わせるのではなく、常に上昇志向で進んでいくことが大切なんです」。
学生たちに期待することは3つ。夢を持ち、着実に達成していくこと。自身の身の丈を図ること。そしてそのギャップを埋める努力をすること。
「一人の力には限界があります。だから、チームを作って、その力を借りてください。そして、同質だけではなく、異質な人も受け入れてください。そこから見えてくるもの、生まれてくるものがあります」。
夢に向かって、勇気・覚悟・修練を持ちながら、やり切って欲しいと学生たちへのメッセージで締めくくられました。
講演を終え、質疑応答のコーナーでは、学生からさまざまな質問が寄せられました。
■石崎大和さん(事業創造学部2年)
「日本において“同族経営の代表”ともいわれるトヨタ自動車で、どのようにして社長に就任したのですか?」
渡辺さん「社長になろうとはあまり意識していませんでした。結果的にみると、好きなことをやっていたように思います。私自身の信条が“明るく、楽しく、元気よく”。主体性を持って、与えられた物事に関して精いっぱいやることが大切だと考えます。そして、講義の中でも言いましたが、肯定でも否定でも“なぜ?”を持つこと。関心や気づきは、活力に繋がりますから」。
■羽田郁矢さん(情報学部2年)
「講義を受け、起業に興味を持ちました。とにかく挑戦することが大切とのことでしたが、社長になっての一番の気づきは何だったのでしょうか」
渡辺さん「何かをはじめるにあたって起業家精神は大切だと思いますが、残念ながら私自身は持ち合わせていなかった。基本的には、大好きなトヨタ自動車の内部を固め、お客様に喜んでもらえる自動車を作ることに90%の力を注いでいたように思います。『それぞれの部署の人たちが、思い切って仕事ができるような風土を作る』こと、つまり『いいチームを作ること』が、私の起業家精神ですね。」
歩んできた道のりとそこに隠された秘話に、講義時間を忘れ、惹きつけられた今回の土曜講座。日本では圧倒的、世界でも有数の大企業のトップとして活躍された渡辺さんの思考や経験談は、これから未来を担う学生たちにとって貴重な時間となりました。
土曜講座の様子は、今後もHPでレポートしていきます。