【来場者とのQ&A】
(第5回 【近年の作品、そしてアニメーターとしての心得】はこちら)
Q1 マッドハウスの先輩の皆さんのほかに、丸山正雄社長のエピソードや印象がありましたら教えてください。
伊藤 当時の私は下部も下部の人間だったんですが、韓国からスタジオへ帰ってきたタイミングで、棚の辺りでごそごそとしていたところ、すれ違いざまに丸山社長が私の背中をぽんとたたいて、「ご苦労さん」と言ってくれました。しっかり見てくれているのかと感じて、だからこそ丸山さんはいろいろな方に慕われているんだなと思いました。こちらは見られていないと思っていても、しっかりと見てくれています。それは驚いた点です。
Q2 お話の中で、今も紙とペンを使って絵を描かれると伺いました。伝統的なアニメーションの方法について質問があります。現在、テクノロジーが発展していく中で、若い世代は新しい技術やパイプラインを採り入れていっています。コロナ禍もあり、新しいやり方やデジタルへ移行せざるを得ないという状況になったかと思います。このような伝統的なアニメーションを保存していきつつ、新しいテクノロジーも採り入れていく、そのバランスはどのように取っていけばよいと思いますか。
伊藤 その意味で言うと、私は後進的な人間です。若い人たちがデジタルを駆使して、すごいカットをさまざまな作品で作っています。非常に焦りを感じています。デジタルの人でなければ入れないという作品も増えてきており、早急に対応しなければと考えています。
Q3 基本的に従来の伝統的なやり方からデジタルのやり方へ移行することは、よい取り組みだと思いますか。伝統的な要素や取り組まれてきたことを、上手にデジタルのやり方にも採り入れて、今まで培われてきた技術を失われないようにするためには、どのようにすればよいとお考えですか。
伊藤 今後は手描きのよさを生かしたいという特殊なシーンをつくるしかないと思います。私が関わっているのは商業アニメーションであり、作品のフロー、流れをスムーズにするためには、今後はデジタルで描かなければならず、アナログの人は作品全体にとって障壁になってしまいます。アナログ的なよさを生かそうと思う場合は、そのような特殊なシーンをつくるしかありません。いろいろな使い方で、作品の表現をバラエティー豊かにしていくとき、必要になるかもしれません。
(了)