本学における産学連携プロジェクトの一環として、産業界で活躍するビジネスパーソンを講師に招いて実施している「開志コラボセミナー」。今回は、8月19日(木)にオンライン形式で実施されたコラボセミナーの模様をレポートします。
第4回となった今回の講師は、株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役 松山洋さん。
1996年、福岡県で誕生した株式会社サイバーコネクトツー。松山さんを含めわずか10名でスタートしてから早25年、現在は福岡県・東京都・カナダのモントリオールの3拠点、延べ280名のスタッフがさまざまな家庭用ゲームソフトの開発に携わっています。代表兼ディレクターである松山さんは、開発の傍ら毎月60冊の漫画誌を読むほどの漫画好き。ゲームはもちろん、アニメや映画などエンターテインメントを幅広く、こよなく愛し、世界に向けてたくさんの“面白い”を発信し続けています。
今回のテーマは「日本のアニメ・マンガ・ゲーム産業の今とこれからに必要なもの~将来をになう若者へのメッセージ~」。エンターテインメントの世界で日本の先端をいくサイバーコネクトツーのトップが考える、ゲーム業界を目指す若者たちに必要なこととは?業界の問題、背景、そして将来のクリエイターたちへのメッセージを語っていただきました。
強みを生かせるのは、家庭用ゲーム機のソフト
松山さんが代表を務めるサイバーコネクトツー。日本全国、そして世界中にある同業他社との明確な違いは「スマートフォンのアプリゲームの開発を行っていないこと」。アクションゲームや漫画・アニメをテーマにしたゲームの制作を多く手掛けていることから、スマートフォンではその面白さを体感できないといいます。
「アクションゲームの醍醐味は、コントローラーの物理ボタンをパチパチ押すこと。せっかく美麗な画像をつくっても、小さな画面では限界があるんです」。
自分たちの強みを生かせるのは、家庭用ゲーム機のソフトであり、ゲーム業界の鉄則ともいわれる“一番の必殺技で勝負する”を地でいくのがサイバーコネクトツーであるといいます。
ファミリーコンピュータ、通称ファミコンからはじまったゲーム業界。アニメや漫画、映画など、他のエンターテインメントと比べるとその歴史は浅く、後から参入してもまだまだチャンスが見出せるといわれながらも、ここ10年、スマートフォンの普及で業界自体も変化したといいます。「日本を代表するゲームクリエイターとして名を馳せているのは、40~60代。若い人材が育たないことが深刻な問題になっています」。
ゲーム業界で若い人材が育たない理由とは?
ひとつは、メーカーの問題。市場規模2兆円といわれる日本のゲーム業界は、全体でいえば右肩上がりですが、そのうち1兆3千億円がスマートフォンアプリといわれています。そうなってくると、家庭用ゲームの開発に携わる企業は、若い人材をゼロから雇い入れ、育てることが難しくなり、即戦力を求めるように。中途採用が主流となり、新卒が採用されにくい時代なのです。
もうひとつは、若者自身の問題。データを見てみると、ゲーム業界を志望する約90%の若者が不採用となっており、新卒が採用されにくいという現実とは違った問題があるといいます。
「ゲームクリエイターになるためにCGやイラスト、プログラミングの勉強をしているという学生は多くいますが、学ぶ前にやるべきことがあります。それは、業界を分析すること。年間で販売される家庭用ゲームソフトのタイトル数は?一般の人は、1年間に何本のゲームソフトを購入しているか?2020年、100万本以上売れたゲームタイトルは?…等、プロになりたいなら、まずは分析。CGやイラスト、プログラミングを学ぶより前に、業界やビジネスの構造を知ることで、求められているニーズがわかり、自ずと攻略法が導き出せるのです」。
遊ぶ・読む・観る・体験する、そしてそれをインプットする
ゲーム業界は、20%が黒字タイトルで、そのほかは赤字。言い換えれば、20%の確率で生まれるスーパーメガヒット作が、そのほかを支えていることになります。
「面接に訪れる若者のほとんどが、最近ゲームをやっていない、漫画を読んでいないと答えます。これでは、エンターテインメントについて一緒にミーティングすることはできない。CGやイラスト、プログラミングの勉強はクリエイターになる手段であり、目的ではない。クリエイターの目的は『面白くて、売れるものをつくること』です」。
学生時代にやっておくべきことは、“勉強、そして遊ぶこと”。学校では、勉強の仕方は教えてくれるけれど、遊び方は教えてくれません。遊んで、ただ面白かったではなく、面白かったのはなぜかを分析することがクリエイターの遊びだと、夢に向かって突き進む学生たちに進言してくれました。
第2部:トークセッション「マンガ(版権)」とコラボゲームの可能性、その未来
特別講演を終えての第2部では、アニメ・マンガ学部の教員が登場。コンテンツ業界に精通した4名による、マンガとゲームの可能性を語るトークセッションが行われました。
登場したのは、成田兵衛先生、KENTOO先生、森岡淳先生。成田先生の進行で、サイバーコネクトツーが手掛けるゲームにまつわるお話をはじめ「職場の社員待遇はどのような状況ですか?」「人材育成やインターンシップはどのように実施していますか」「版権元ではないゲーム会社が海外にまで支社を作ろうと思ったきっかけは?」など、ゲーム業界の現状とさまざまな課題について議論が交わされました。
4月に創設されたアニメ・マンガ学部の紹介も兼ねた、今回のコラボセミナー。日本だけでなく、世界中にファンを持つアニメ・マンガ・ゲーム業界は、これからも世界中に“面白い”を発信する重要な産業のひとつとして、ますます発展していくことでしょう。
今後も開志専門職大学では、さまざまな方をお招きしてのコラボセミナーを開催予定です。