本学における産学連携プロジェクトの一環として、産業界で活躍するビジネスパーソンを講師に招いて実施している「開志コラボセミナー」。今回は4月27日(水)にオンライン形式で実施したコラボセミナーの模様をレポートします。
第9回となった今回の講師は、LINE株式会社 公共戦略室 室長 福島直央さん。三菱総合研究所などで、情報通信政策に関する研究・コンサルティングなどに従事したのち、2018年LINE株式会社に入社。公共戦略室にて官公庁や自治体を対象とした渉外業務、公共セクター向けのLINE関連サービス利用に関する提案、CSR活動、産学連携業務などを担当します。2021年から公共戦略室室長、LINE財団企画室室長として、行政DX、防災DX、CSR、ESG、SDGs等を所管しています。
講演のテーマは「ソーシャルメディアとAIの活用事例と地域のビジネス促進の可能性」。遠隔でも、メッセンジャーや通話を介して他人とコミュニケーションがとれるLINE。私たちの生活に、なくてはならないソーシャルサービスのひとつです。近年、LINEが力を入れて開発しているというAI技術の活用例を交えた地域ビジネス促進の可能性とは?
日本全国で使われるメッセージングサービスに
「いつでもどんな時でも、人と人を繋ぐことができるようにと“LINE”は開発されました」。
2011年の東日本大震災発生時、通信規制により多くの電話やSMSが繋がりにくくなりました。大切な人と連絡が取れず、安否確認すらできない。その出来事をきっかけに、通信規制がなくパケット通信のみでやり取りができるコミュニケーションアプリ・LINEが誕生したのです。
現在では、月間約9,200万人ものユーザーを抱える大手ソーシャルネットワークサービス(SNS)へと成長。新型コロナウイルス禍の影響もあり、離れていてもコミュニケーションがとれるLINEの需要は高まる一方です。メッセンジャー以外にも、音楽や漫画などのエンターテインメント、決済やローンなどのファイナンシャルなど、多岐に渡るサービスを展開。私たちの生活を支えるとともに、新たな課題の発見や解決にも目を向けています。
行政や自治体、企業のサービスをもっと手軽に
「LINEのミッションは“CLOSING THE DISTANCE”。世界中の人と人、情報、サービスの距離を縮めることを目的としています」。
公共領域を担当している福島さんは、自治体と連携し、人々の暮らしをより良いものに変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指します。日常生活のなかで多くの人に自治体のサービスを利用してもらうにはどうするべきか、自然な流れでサービスを利用してもらうにはどんな仕組みが最適か…これらの解決には、AI技術を組み合わせたソーシャルメディアが効果的だといいます。
「行政や自治体、企業のサービスを利用するにあたって、限られた受付時間内での問い合わせや往訪に、ハードルの高さを感じる人は多くいます。そこで、スマートフォンから24時間いつでも手軽にアクセスできるように環境を整え、よりシームレスなサービス利用を目指しています」。
「誰一人取り残さない」デジタル化を実現するために
「デジタル化を進める一方で、アナログを残した方が良いのではないかという意見もありますが、必ずしもアナログを残す必要はありません。デジタル化により便利になることで、自然と利用する人は増えていきます。どんなやり方があるかを、社会全体で考えていくことが要となります」。
高齢者はAIを使いこなせないのではないかという課題に対しては、インターフェースの改善を提案。今までITに触れてこなかった分、デジタルリテラシーの向上に対応することが重要だといいます。その一環として、自治体と共同で地域住民へ向けたデジタルリテラシーの講座を実施。自治体へのデジタルサービス導入のサポートだけでなく、住民間の情報格差を解消するための支援活動にも積極的です。
「特定のサービスを提供するというよりは、どうやったら使ってもらえるのかを想定します。まずは、相手が実現したいことをヒアリング。デジタル技術を活用することで課題が解決できるのであれば、知ってもらい、興味を抱いてもらう。方法をマニュアル化するよりも、実際に触れて、使い続けてもらうことが大切です」。
利便性向上のために、開発・運用されるLINEのソーシャルメディアやAI技術。ただ開発するだけではなく、どうやったらもっと多くの人に手軽に使ってもらえるか、デジタル化に取り残されないためにできることは何か…私たちの暮らしをより豊かにするために試行錯誤し続けるLINEの今後に、注目が集まります。
今後も開志専門職大学では、産業界で活躍する方を講師にお招きしてのコラボセミナーを開催予定です。