4、アニメ『こち亀』のプロデュース
(第3回【「日本アドシステムズ(NAS)」の実態】はこちら)
-- 先ほどの三沢伸さんですが、『こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)』でも一緒にお仕事をされていますね。
片岡 『こち亀』は、随分前から企画があったんです。その前が『キテレツ大百科』だったんですね。『キテレツ』が1987年から始まって、『こち亀』は96年かな。でも、実は『陽あたり良好!』の後企画に『こち亀』やりたいって集英社に行ったら、社長からノーが出たんです。それでその代わりに、スペシャル番組を何本かやっていこうっていうスタイルで始めていた『キテレツ』を入れたんです。でも『ドラえもん』をテレ朝でやってて、アサツーの扱いじゃないですか。アサツーは『ドラえもん』のおかげで会社が大きくなったんですよ。それで同じ藤子先生の作品をCXでテレビシリーズにするっていうのは、マナー違反っていう感覚ですね。なので、時々テレビスペシャルとして放送する分には、そんなに迷惑にはならないぞってことで、そうしてたんです。でも『陽あたり良好!』の後企画に「『こち亀』がいいんじゃない?」ってお願いに行ったら、編集部の担当者は喜んでくれたんですけども、「社長が何て言うかな」って言うんです。それで実際に、当時の社長からノーだと。「ふざけた警察官が登場する作品をマンガ雑誌に連載してる分には構わないけど、テレビのゴールデンタイムのど真ん中にやるなんていうのは、警察組織そのものを刺激することになるから駄目だ」って、そういう理由で断られたんですよ。でも、意見って変わるかもしれないじゃないですか。それで2~3年ごとに、ずっと言ってたんですよ。それで『週刊少年ジャンプ』が最高部数の650万部くらいを記録した後に、少しずつ下がり始めて、『少年マガジン』に追い掛けられて、このままいくと引っくり返されるっていうとき、編集長が交代して、鳥嶋さんが帰ってきた。
鳥嶋さんは『Vジャンプ』をつくるって言って、自分で『週刊少年ジャンプ』編集部を飛び出して大成功したじゃないですか。『ファミ通』しかなかったゲーム雑誌に、対抗誌をつくったって大変なことなんですよね。それが大成功してるんだから、そちらをやっていればいいのに、『ジャンプ』の部数が減ってきたんで呼び戻された。その人事が出る前の情報をキャッチしてたので、鳥嶋さんのところに行って、「ぜひ、『こち亀』をやらしてください」って。鳥嶋さんは「枠はどこにあるんだ」って言うから、「日曜19時枠の『キテレツ大百科』の後企画でお願いしたい」っ言ったら、「分かった。社長がノーって言ってる話は聞いてる。でもこのタイミングだったら、社長も意見を変えてくれるかもしれない」って言って、新編集長就任後に『ジャンプ』の部数減を食い止めて反転させるためのきっかけとして、『こち亀』のアニメ化をOKしてもらったんですよ。社長は同じ意見だったそうですよ。でも、背に腹は代えられないじゃないですか。鳥嶋さんは、そういうところが偉いんですよ。『ドラゴンボール』がいい例ですけども、もともと二次利用に、とても優れた編集者なんです。ある種のコンテンツプロデューサーとしての能力がすごいんです。編集者としても、もちろん素晴らしいんだけども、僕はそれを測る基準を持ってない。でもコンテンツプロデューサーとしての能力は素晴らしいと思いますよね。
実際にこち亀が始まる前にそういう事情があったので、アニメの内容にはとても気を使いました。マンガの初期の『こち亀』では、両津勘吉がピストルをバンバン撃ってるんですけど、それはやめようとか。あと両津勘吉が、家の風呂場の窓を開けてのぞくみたいな場面があったんですけど、現職の警察官がのぞきって駄目でしょって話し合って、結局やらなかったと思います。
でも実際に、鳥嶋さんに編集長が交代するという瞬間に「『こち亀』やらしてくれ」って言いに行ったのは私ですし、そのときに日曜19時の枠は、『こち亀」の時までは、企画の決定はアサツーが判断してフジテレビに持ち込むと、その企画をフジテレビはそのまま受け入れるという約束の枠だったんですよ。つまりアサツーが完全買い切りで、フジテレビは業界の言葉で言うと「こするだけ」って言うんです。放送素材を機械に乗せて、昔はフィルムですけど、それを回すだけ。「こするだけ」っていうのは、つまりアサツーが中身を作った完成品の30分番組1本分の素材を持ち込む、スポンサーのCMまで全部一緒に入れたものをパッケージで納品するっていう、そういう意味なんですね。実際には、もちろん素材は別々に入れるんですけどもね。
ただ、実態は違いますよ。論理的にはそういう枠だっていうことになってるだけで、実際にはフジテレビの編成部プロデューサーと打合せしながら作る。それは『タッチ』だったら岡正さん、『ハイスクール!奇面組』なら今のフジテレビの社長の清水賢治さん。『こち亀』も清水さんなんですよ。放送枠としてはアサツーが決めて、この企画をやりたいって言ったことに対して、約束事としては、フジテレビは反対しないっていう枠だったんです。ただ、視聴率が大事だから、局の編成がOKと言って初めて決定になる、ということは、もちろんあるんですけどね。
(第5回【テレビアニメ製作におけるアサツーの地位とクレジット】に続く)