<第2回 土曜講座レポート>宇宙をめざせ!宇宙飛行士・土井隆雄氏が語る、日本の有人宇宙活動

2021年度から始まった開志専門職大学の取り組み「土曜講座」。本学の客員教授・特別講師をはじめ、各分野の第一線で活躍する方を講師に招いて特別講演を行うことで、学生のみなさんの現代経済への理解を深め、日々の学習意欲へとつなげる取り組みです。
今回の記事では、5月29日(土)に行われた第2回 土曜講座の模様をレポートします。

第2回のテーマは「日本の有人宇宙活動」。講師は本学の客員教授でもあり、京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授、宇宙飛行士の土井隆雄さんです。

 

世界の宇宙開発をリードするのは?有人宇宙活動の歴史と現状

「みなさんは宇宙に行きたいですか?私の話を聞いた後『宇宙へ行きたい!』と思ってくれる人が増えたらいいなと思います」

そんなお言葉から始まった今回の土曜講座。土井さんは1997年11月、スペースシャトル・コロンビア号に搭乗。16日間のミッションで、日本人宇宙飛行士として初めての船外活動を行いました。また、2008年3月にはスペースシャトル エンデバー号に搭乗。日本が開発した最初の有人宇宙施設「きぼう」に乗り込んだ初の日本人として困難なミッションを遂行するなど、日本の有人宇宙開発史において大きな功績を残しました。

まずは土井さんから、世界と日本における有人宇宙活動の歴史についてお話がありました。
1961年に世界での宇宙開発が始まって以来、アメリカ・ロシアが世界の宇宙開発をリードしてきましたが、1985年から日本でも宇宙開発がスタート。1985年に毛利さん、向井さん、そして土井さんという3名の宇宙飛行士が選ばれてから、毎年1名の日本人宇宙飛行士を宇宙へ送り出しています。
土井さんによると、有人宇宙活動の定義は3つあるといいます。

「ひとつは『最先端の科学技術を駆使すること』、もうひとつは『人文社会的連携』、そして最後は『国民の高い関心』です。最先端の科学技術を宇宙開発に実装できる人材を社会が育て、私たち宇宙飛行士が命を賭けて宇宙へ行く。そこへ国民からの注目が高まることで、有人宇宙活動が活性化していきます」

 

無重力空間で人間はどうなる?宇宙飛行士ならではのリアルな体験談

続いては、土井さんの宇宙における船外活動や訓練などの体験談を、当時の臨場感あふれる動画を交えながらご紹介。土井さんが搭乗したスペースシャトルの打ち上げ風景や、国際宇宙ステーションで行われているライフサイエンス実験の様子など、貴重な映像が次々と映し出され、学生たちも見入っていました。

当時、土井さんが宇宙へ行くためにチームのメンバーと行った訓練は、スペースシャトルの操縦、船外活動の仕方、国際宇宙ステーションでの仕事内容等、約2年間に及んだといいます。訓練を通して、一番重要だと思ったのは「チームワークを作ること」だと振り返る土井さん。

「宇宙活動は一人ではできないので、常に仲間と行動します。宇宙におけるチームワークとは『君は僕に命を預けることができるか、僕は君に命を預けることができるか』というレベルの信頼関係。それがないと、怖くてとても宇宙へ行くことはできません。宇宙では、チームワークが非常に大切なんです」

 

有人宇宙活動の最前線で活躍して大きな偉業を成し遂げた土井さんは、2016年に京都大学宇宙総合学研究ユニット特定教授に就任。宇宙空間での樹木の生育や、宇宙における建築資材として木材を使用するための研究を進めており、さらなる宇宙開発への挑戦を続けています。
そんな土井さんから、学生たちへこんなメッセージを頂きました。

「私が有人宇宙活動に携わって気付いたことは二つあります。一つは『地球の素晴らしさ』。地球は宇宙から見ると有限な世界で、そこに全ての生命が生きている。この環境を、素晴らしいまま保存していかなくてはと強く感じました。もう一つは、『人間の素晴らしさ』。私たち人間には、宇宙ステーションのような巨大構造物を作れるだけの知恵と、そのためにさまざまな人々と協力しチームワークを発揮することができる。大きなことを実現できる力があります。今日、宇宙の魅力を知ることができた皆さんへ、最後に私の好きな言葉を贈ります。『宇宙をめざせ!』」

 

やるべきことを全力で。開志生へのメッセージ

講演を終え、質疑応答のコーナーでは、学生たちからこんな質問が寄せられました。

熊倉一哉さん(情報学部1年)「土井先生の実体験から教えていただきたいのですが、学生のうちにやっておいた方がいいことは何でしょうか?」
土井さん「一つ一つの勉強や活動を全力で行うこと。当たり前のことですが、なかなかできることではありません。今日みなさんにお見せしたのは私の活動の中で最も華やかな部分で、その前に実は大きな苦労があります。私は宇宙へ行く前に、一度目は12年間、二度目は11年間に渡って訓練を行いました。しかも、訓練中に一度でも気を緩めたら元には戻れない。自分にはそれができたから、宇宙に行けたんだと思います。大学生活は忙しいですよね。辛い時もあるかもしれませんが『今、自分はやるべきことに全力を出せているか?』と常に振り返ること。自分のやるべきことを、日々100%の力で頑張ってください」

 

荒井隆清さん(事業創造学部 1年)「世界でどんどん宇宙開発が進んでいますが、逆に土井さんが不安に思っていることがあれば教えてください」
土井さん「宇宙開発が今後ますます発展するには、国際協力が大切になります。残念ながら現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、国家間の交流が抑えられています。これを乗り越えて国際協力を盛り立てなければ、宇宙開発は進展しません。感染症問題を世界がどのように解決していくのか、非常に大きな課題を突き付けられていると感じます」

 

抜粋した質問はほんの一部。今も宇宙開発の分野で活躍する土井先生に、学生たちからさまざまな質問がありました。
土井さんに質問を投げかけた2名の学生に、今回の土曜講座の感想を聞いてみました。

▲事業創造学部 1年 荒井隆清さん
「今回の講座で、宇宙の魅力を学ぶことができました。今後、アメリカと中国が中心となって宇宙ビジネスを発達させ、価格競争によって技術進歩にますます拍車が掛かる予感がしました。これからは私自身も、宇宙規模の視野を持って、宇宙開発ビジネスに注目していきたいです」

 

▲情報学部 1年 熊倉一哉さん
「宇宙での活動や、地上では不可能な研究等のお話を通して『宇宙の素晴らしさ』を学ぶことができました。なかでも私は、土井さんが現在行っている研究内容に強い期待感を抱きました。私も土井さんのように、一つ一つのことに気を抜かず、夢のために日々努力していこうとあらためて感じました」

 

地球や宇宙、人類の素晴らしさはもちろん、こうした宇宙開発を発展させるために必要なことや、学生生活でも実行できる未来へのアドバイスをいただいた今回の土曜講座。開志生にとっても、非常に実りある時間となりました。

 

次回の土曜講座は、6月19日(土)
丸紅株式会社 執行役員・次世代事業開発本部長 大本 晶之様が講師を務める予定です。