2025年4月15日(火)、事業創造学部の授業「企業設立実習Ⅱ」にて、八海醸造株式会社の専務取締役・海津博之さんをゲストにお招きしました。
企業設立実習Ⅱでは、経営者や経営幹部の方から直接お話を聞くことで、企業経営や持続可能なビジネスの考え方を学んでいます。今回は、日本酒メーカーとして国内外で注目を集める八海醸造の取組みについて、経営の最前線にいる方から話を聞ける貴重な機会となりました。
八海醸造の歴史と現在の取り組み
八海醸造は1922年創業、新潟県南魚沼市に本社を構える歴史ある企業です。2025年3月には、アメリカ・メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースとパートナーシップ契約を結ぶなど、グローバルな展開でも話題を集めています。
講演では、「よりよい酒を、より多くの人に」を企業理念とし、「品質責任」と「供給責任」の両立を目指した酒造りについて、詳しく説明いただきました。なかでも、「食中酒」としての日本酒の役割に注力している点が印象的でした。
・食事の味を引き立て、邪魔をしないこと
・「淡麗でバランスの取れた」高品質な味わいを目指していること
・食事の時間をより豊かなものにする存在であること
これらの品質を実現するために、製造技術の向上だけでなく、自社内で市販されない大吟醸酒を製造し、品質目標の実現に向けて技術を高めていることについても、丁寧にご説明いただきました。
世界に広がる日本酒文化と「次の100年」への挑戦
酒類市場の縮小が進む中、八海醸造では国内だけにとどまらず、海外事業にも力を入れています。米国「ブルックリンクラ」と業務資本契約を締結し、現地での酒造りを通じて「日本酒を文化として広める」取り組みについて、ご紹介いただきました。
現在は『次の100年に向けたHAKKAISANの理念』を掲げ、以下のビジョンのもとで経営が進められています。
パーパス:「発酵と創造の力で心の豊かさを育む」
ビジョン・志:「発酵創造企業」
ミッション:「豊かな時間をより多くの人に」
バリュー:「品質追求」「丁寧」「品格」「感謝」「素直」「思いやり」「ユニーク」「ロマン」
この理念に基づき、日本酒事業の深化に加え、米国の酒造メーカーBrooklyn Kuraとの連携による海外展開の加速、さらには発酵技術を活かしたスピリッツ事業への挑戦など、多角的な取り組みについて、ご紹介いただきました。
そして、地域とのつながりを大切にした「魚沼の里」のような地域共生事業にも力を入れており、観光や地元の活性化にも貢献されています。
経営から学ぶリアルなビジネスの姿
創業時の話や初期メンバーの努力、そして現在の会長・南雲二郎さんが進めた品質改革についても語られました。雪国・魚沼という厳しい環境でどのように企業を成長させてきたのか、リアルなエピソードに学生たちは引き込まれていました。
また、新潟県内や全国の市場動向についても丁寧に解説していただきました。特に印象的だったのは、八海醸造が取り組む4つの柱となる事業と、その数値目標についてのお話です。
・日本酒事業(既存)の深化
・海外展開の加速(輸出・現地生産)
・スピリッツ事業の拡大(例:ニセコ蒸留所)
・地域共生事業(観光や地域連携)
これらの戦略や計画づくりの考え方は、まさに学生が授業で学んでいる「事業計画」の実践そのもの。経営者目線のリアルな話は、これから計画づくりに取り組む学生たちにとって、大きなヒントになったはずです。
学生たちは、酒造業界や地域企業の未来、そしてグローバルな視点を持った経営とは何かについて、たくさんの気づきを得ることができました。海津様の講演は、学びを深める貴重な機会となりました。
海津様、誠にありがとうございました。