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パッションがあれば、難しいことも乗り越えられる。チャンスがあれば自分から飛び込むこんでほしい。 高橋信介氏

iPhoneの部品、警察や国際空港、さらにはユニバーサル・スタジオなどで使われる生体認証システムやコンビニのレジ、こうしたアメリカの生活で欠かせないモノやサービスには、日本の技術がたくさん使われています。長年、日本の優れた技術をアメリカに紹介し、売り込んできたのが、NECコーポレーションオブアメリカの高橋信介さんです。中でもNECの顔認証システムは、アメリカの政府機関で10年近くトップレベルと認められ続けてきました。今は、ワシントンD.C.にて、アメリカ政府に最新の技術について解説をし、日米間の技術連携の促進を働きかけているという高橋さんに、お話を伺いました。
アメリカ政府からの評価は常にトップクラス、 日本の高い技術をアメリカに伝える仕事。

開志専門職大学

まずは、高橋さんの今のお仕事について教えてください。

高橋信介

NECコーポレーションオブアメリカという会社で主にアメリカの議会への対応をしています。

高橋信介

NECは日本の技術会社で、アメリカではホテルの電話や、セブンイレブンのPOS(レジ)など通信関係が強かったのですが、最近の成長分野は指紋や顔で個人を特定する生体認証です。今は、それを広い範囲で使ってもらうため、アメリカ政府に働きかけています。

開志専門職大学

導入事例はあるのですか?

高橋信介

すでにアメリカの多くの警察機関ではNECの顔認証システムが使われています。もともと30年以上前からNECの指紋認証システムが使われていて、最近はそれが顔認証に移行してきているのです。

高橋信介

あとはアメリカの国際空港。アメリカの一部の空港で出国前の確認に顔認証システムを使い始めています。アトランタの空港ではデルタ航空と組み、パスポートやチケットを出さず、顔認証だけで国際線に乗れるようになりました。

開志専門職大学

こうしたNECの最新技術を、アメリカ政府に伝えるのが高橋さんの現在のお仕事ですね。

高橋信介

そうです。例えば、顔認証に関わる新しい法律を作ったり、予算配分をしたりするには、 プライバシーの問題、人種差別への配慮、最新の技術を警察がどう使うべきかなど、さまざまな専門知識が必要になります。そこで、顔認証の専門家として、私たちが議員や議会スタッフに説明をするわけです。

高橋信介

NECは60年くらい前からアメリカに進出しています。顔認証技術は世界中で70社くらいが技術を持っているのですが、アメリカの商務省の中にあるNlSTと呼ばれる世界中のさまざまな最新の技術を評価する部門の評価で、NECは過去10年ほどトップを走り続けています。

開志専門職大学

それはすごいですね。

高橋信介

顔認証は、他にもフロリダのユニバーサル・スタジオで、アトラクションに乗るためのエクスプレスパスに使われるなど、伸びしろのある技術です。

アイデアのアメリカと技術の日本、 最新のイノベーションに日本の技術が使われることで社会貢献。

開志専門職大学

高橋さんがNECに入社した経緯を教えていただけますか。

高橋信介

就活では海外進出を積極的に行う会社を受けました。商社より自社でモノを作るメーカー、中でもこれからの時代はエレクトロニクスだろうと思い、1981年にNECに入りました。入社当時のNECは、海外進出を大きく掲げていたのです。

開志専門職大学

新卒からずっとNECなのですね。これまでどのようなお仕事をしてきましたか?

高橋信介

衛星通信や光通信など、扱う商品や仕事内容はいろいろ変わりましたが、基本的にはずっと、技術を売る営業として北米での事業に携わっています。

高橋信介

2003年に、「将来はアメリカ事業を引っ張っていくことを期待している」とNECの関連会社であるJAE(日本航空電子工業)に誘って頂き、05年にJAEのアメリカ法人の社長として渡米しました。それ以来、アメリカに住んでいます。13年からは、現在のNECコーポレーションオブアメリカに所属しています。

開志専門職大学

どんなことに仕事のやりがいを感じますか? 高橋さんの仕事の醍醐味って何でしょう?

高橋信介

日本の得意な技術を、アメリカの一番革新的なイノベーションに使ってもらうことで、社会に貢献することでしょうか。

高橋信介

例えばiPhone。iPhoneはスティーブ・ジョブズという天才の「こういうものが欲しい」という思いから生まれた物だけれど、中には日本の部品がたくさん使われています。初代iPhoneの部品は50%以上が日本製だと言われています。

開志専門職大学

そうなんですね。

高橋信介

普通、コンピューターや携帯電話の中って数多くの部品や配線がごちゃごちゃと入っていますね。でも、アップルが目指すのは、小ささ、丈夫さ、そして美しさ。開けた時の部品配列まで美しくないといけないのです。普段は人の目につかない部品の形まで美しさを追及しています。

高橋信介

今では日本の部品が占める割合は減ってきていますが、初代iPhoneの最初の生産で、アップルの高い要求にこれほど対応できた国は日本だけでした。

開志専門職大学

日本の誇るべき技術ですね。

高橋信介

日本には、NECグループにも他の会社にも、素晴らしい匠の技術を持つ職人がたくさんいます。日本の匠の技術をアメリカの最新のイノベーションで使ってもらえることが醍醐味で、充実感があります。

高橋信介

JAEの2000年の海外売上は全体の売上の2割くらいでしたが、今では海外売上が全体の約7割を占めるようになりました。

開志専門職大学

高橋さんはJAEにおけるアメリカ躍進の立役者ですね。

高橋信介

いいえ、立役者はたくさんいます。実際に部品を作る技術者とか、試作品を山ほど作った技術者とか、たくさん人がいて、会社が躍進していく中で、たまたま私もそこに参加できただけなんですよ。

高橋信介

先ほどの顔認証のアルゴリズムもそうですが、日本には世界トップレベルで走り続けていた技術者がいて、私の仕事は、彼らの優れた技術をアメリカで活用してもらえないかと働きかけることです。

高橋信介

アメリカは技術の使い方がうまい国です。例えばアップルにあったのは「こういう電話があればいいのに」というアイデアと、そのアイデアを動かす力。実際に使われた技術はアップルが開発したのではなく、日本のさまざまな会社によるものです。

ホームステイが異文化交流の原点、 通じないからこそ、頑張ろうと思った英語。

開志専門職大学

では、高橋さんが、そもそも海外を目指すきっかけは何だったのでしょう? どんな高校生でしたか?

高橋信介

偶然、高1の夏休みに、地元横浜のYMCA(キリスト教青年会)がホームステイの受け入れ先を募集していることを知り、ハワイの高校生を家で受け入れました。それが異文化交流の原体験です。

開志専門職大学

何が印象に残っていますか?

高橋信介

自分と違う言葉を話し、自分と違う考えを持つ人との初めての出会いです。自分にとっての当たり前が、相手の当たり前でないことが驚きでしたね。

開志専門職大学

では、初めて海外に行ったのはいつですか?

高橋信介

高1で参加したそのプログラムは、1年ずつ交互にハワイと横浜で開催されていたので、高2の夏休みにハワイに行きました。

高橋信介

それを機に、大学生になったら留学をしたいと思うようになり、留学制度の充実した上智大学に進学しました。そして、大学3年生の時、交換留学でウィスコンシン州立大学に1年間行き、自分とは違う考えの人たちと触れ合うことで、自分の文化を理解して発信していくような仕事に就きたいと思うようになったのです。

開志専門職大学

それがNECにつながるわけですね。

開志専門職大学

英語は高校生の頃から熱心に勉強していたのですか?

高橋信介

正直、英語は得意科目ではなかったのですが……。

高橋信介

最初にホームステイの受け入れをした時、面白いほど自分の英語が通じないことが衝撃で(笑)。それがきっかけで、英語をもっと頑張ろうと思うようになりました。

開志専門職大学

今はアメリカの政府高官と話すこともあると思いますが、英語力はどのように伸ばしたのですか?

高橋信介

高校生のホームステイをきっかけに、大学は外国語学部英語学科に進み、学びました。あとは交換留学や仕事の現場ですね。

現地の文化や人を尊重することを忘れずに。 異なる意見がぶつかるからこそ、日本企業がアメリカに出る意味がある。

開志専門職大学

日々、アメリカで仕事をする中で、意識していることや、難しく感じるのはどんなことですか?

高橋信介

日本から海外で働く時は、「海外で仕事をさせていただいている」という気持ちを持ち、現地の文化や人を尊重することが大事だと思います。私は、渡米以来、少しずつ、社内のリーダーを日本人の出向者から現地の人に置き換えてきました。

高橋信介

リーダーシップの発揮の仕方は国によって違うし、商品を売る土地をよく知る人がリーダーをやった方が、会社にとっては良いことが多いのです。

高橋信介

私はこれまで、お客さんにも社員にも、「これは日本の本社の方針だから」とは絶対に言わないようにしてきました。本社で決まったことを伝えるだけなら、私がアメリカで働く意味はありませんから。

開志専門職大学

アメリカ人の部下たちをどうやってまとめているのでしょう?

高橋信介

アメリカでは自分の考えをハッキリ言う人が多いですから、現地の人を増やすほど、意見のぶつかり合いが増えます。でも、そうやって意見を言える人こそ重用しないと日本企業がアメリカに出る意味がありません。

高橋信介

なので、従業員が自由に意見交換をできる環境作りは常に大切にしてきました。激しい議論もあるけれど、事を荒立てないように水面下で動くと、その方が不信感につながります。議論の結果、逆に自分の考えを改めることはよくありますし、アメリカ人の部下たちも納得した後は付いてきてくれます。

開志専門職大学

高橋さんのこれからの目標を教えてください。

高橋信介

バイデン大統領と菅首相の日米首脳会談の共同声明に「日米の技術協力・技術連携」という言葉が入りました。これまで、国のトップの声明レベルで技術について言及されたことはなかったのですが、日米で技術の連携をしていく機運が高まっていて、研究開発の段階から日米共同で行う話が出ています。

高橋信介

今、日本の最先端の技術をさらに高め広めようと、日本政府とも話を進めています。アメリカと連携して研究や開発を進めていくことに、少しでも貢献できればいいですね。

パッションがあれば、難しいことも乗り越えられる。 まずは自分から飛び込むこと。

開志専門職大学

高橋さんから、今の高校生たちに伝えたいことはありますか?

高橋信介

高校生って、見渡せば周りに何かチャンスがあると思うのです。

高橋信介

将来何をやりたいかなんて、すぐには分からないだろうけど、見たり聞いたりするだけでなくて、何か体験できるチャンスに自分から飛び込んでやってみること。自分のパッションを見つけるためにも、自分を「私はこれが得意」と枠にはめず、いろんなことを体験してみて、その体験の中から、これをもっとやってみたいと、湧き出てきた気持ちをつかむことが大事だと思います。

開志専門職大学

まずはやってみることが大事ですね。

高橋信介

そうです。成功するかしないかの差って、パッションの差で、パッションさえあれば難しいこともやってみようと思えるようになります。

高橋信介

自分の体験を増やすことで、一生やっていきたいことや興味のあることが見つかれば、大学で何を勉強したいかも明確になると思います。

高橋信介

今思えば、私も英語に自信はなかったけど、それを乗り越えて、YMCAというチャンスに自分から飛び込んだわけです。

開志専門職大学

特別講義では、どんなことをお話しする予定ですか?

高橋信介

海外で仕事をすることの心構え、特に海外で会社を経営することの心構えです。皆さんが将来一緒に働く人は日本人だけとは限りません。そんな環境で、自由に議論ができる雰囲気を作ることの大切さなど、経営者に限らず仕事で必要な心構えをお話しします。

開志専門職大学

それって、海外や大企業に限らず、小さな集団で働くときでも必要なことですよね?

高橋信介

その通りです。今、ダイバーシティーやイクオリティーという言葉をよく聞きますが、それらは経営者だけではなく、小さなグループの一員として働くときも重要です。併せて、アメリカで仕事をする面白さや醍醐味、少し経営の話もしたいです。

開志専門職大学

高橋さんの講義は、実際に私たちが使う製品やサービスの裏側の技術にまつわる話がたくさん聞けそうで、興味深いですね。

開志専門職大学

特別講義が楽しみです。今日はどうもありがとうございました。

特別講師 高橋信介氏
NECコーポレーションオブアメリカ
取締役会長兼ワシントン事務所代表

横浜市出身。上智大学外国語学部英語学科卒業後、1981年にNEC(日本電気株式会社)に入社。以後、北米関係の事業に携わる。2005〜12年、NECグループの中核部品メーカーJAE(日本航空電子工業)の社長を務め、13年、NECのアメリカ法人であるNEC Corporation of Americaの社長兼CEOに就任。17年より同社取締役会長兼ワシントン事務所代表を務める。

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