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世界最先端のホテル経営における労務管理のエキスパート デビッド・シャーウィン氏

コーネル大学
コーネル大学(Cornell University)はアイビー・リーグを構成する米国の大学である。全米屈指の名門校。ホテル経営学は全米でトップレベル。ノーベル賞では全部門で受賞者を輩出する等、研究・教育の両面において世界最高水準を保持している。ニューヨーク州イサカ市に本拠を置くキャンパスは、氷河の浸食によって形成された丘陵地の斜面に広がり、全米で最も美しいとも評される。

主要世界大学ランキング
・ THE WALL STREET JOURNAL世界大学ランキング:第9位(2019年)
・TIMES世界大学ランキング(総合):第10位(2008年)
・NEWSWEEK世界大学ランキング:第9位(2006年)
・QS世界大学ランキング14位

著名な卒業生
・百木三郎 - 東洋陶器(現TOTO)元社長
・ 山口祐司 - 富士屋ホテルチェーン元総支配人
・ 藤居讓太郎 - コンサルタント、日本サブウェイ創業者
・ 星野佳路 - 星野リゾート社長
・ Lewis Platt  元ヒューレット・パッカードCEO、元ボーイング会長
・ 李登輝   元・中華民国総統
アメリカ東海岸にある8つの名門私立大学で構成されているのが「アイビーリーグ」です。アメリカの各業界のリーダーを多数輩出しているアイビーリーグの中でも、コーネル大学はホテル経営に関して学ぶホテル・アドミニストレーション学部が世界でもトップレベルであることで知られています。同学部で四半期以上にわたり教壇に立ち、優秀な教員が選出される「スティーブン・H・プレジデンシャル・フェロー」の受賞者であるシャーウィン先生にお話を伺いました。
160年の歴史と自由な気風を持つ名門大学で 四半期以上教鞭を執る。

開志専門職大学

シャーウィン先生のお仕事について教えてください。

デビッド・シャーウィン

私が携わっているのは、ホスピタリティー業界(ホテル、レストランなどのサービス業界)の人事や雇用関係の法律に関して教える仕事です。コーネル大学ホテル・アドミニストレーション学部の教授として年に3種類の講義を受け持っていることがメインの仕事です。

開志専門職大学

どのような講義ですか?

デビッド・シャーウィン

「ビジネスとホスピタリティーの法律」、「雇用における差別の法律」、「ホスピタリティー業界における労働関係」という3つの講義です。

開志専門職大学

コーネル大学ではいつから教えているのですか?

デビッド・シャーウィン

1994年から講師として働き始め、その後、1997年に助教授として声がかかりました。コーネル大学を職場にして、もう25年以上になりますね。

開志専門職大学

コーネル大学と言えばアイビーリーグに属する名門大学として日本でも有名ですが、シャーウィン先生から見てコーネル大学の誇れるところはどんなところですか?

デビッド・シャーウィン

法律、建築、エンジニアリング、コンピューター工学などあらゆる学部が世界でトップレベルの教育内容を誇るところです。

開志専門職大学

歴史も長いのですね?

デビッド・シャーウィン

そうです。約160年の歴史があります(注:開学は1865年)。しかし、その伝統と同時に、アメリカの大学の歴史上、非常に画期的なことを行ったことでも知られています。

開志専門職大学

どういうことですか?

デビッド・シャーウィン

アイビーリーグの大学の中で女性の学生を初めて受け入れたのが、我がコーネル大学なんです。

開志専門職大学

それは素晴らしいことですね。知りませんでした。

デビッド・シャーウィン

女子学生を初めて受け入れただけではありません。アフリカ系アメリカ人の学生も、ユダヤ系の学生もコーネルが(アイビーリーグとしては)初めて入学を許可したんですよ。

ハラスメントや差別とは無縁の職場を作るため 労務管理の最先端を教えることにやりがい。

開志専門職大学

長い歴史の中にも自由な気風があるということですね。先生がコーネル大学のロースクールで教えているのは、ホスピタリティー業界における雇用の法律ということですが、どういう内容ですか?

デビッド・シャーウィン

労働や人事に関する法律を広く教えていますが、私がフォーカスを当てているのは職場におけるハラスメントや差別の法律ですね。

開志専門職大学

ハラスメントとはセクシャルハラスメントですか?

デビッド・シャーウィン

セクシャルハラスメントは年々、アメリカにおいては訴訟の件数が増加傾向にあります。しかし、ハラスメントはセクシャルハラスメントだけにとどまりません。

デビッド・シャーウィン

人々がその能力を発揮するために、ハラスメントや差別とは無縁の職場を、法律の力で作り上げることが重要です。ホスピタリティー業界の労務管理の最先端について教えています。

開志専門職大学

なるほど。次に、先生がこれまでお仕事をされてきた経験の中で、こんなすごいことをしたと日本の学生にも分かりやすく教えていただけますか?

デビッド・シャーウィン

それは2014年に「スティーブン・H・プレジデンシャル・フェロー」に選ばれたことです。これはコーネル大学で教鞭を執る人に対して与えられる最も栄誉あるタイトルです。

デビッド・シャーウィン

毎年、ワイズフェロー委員会や学生たちが、大学で講義を受け持っている教員の中から2名か3名だけをこのフェローに選ぶのです。私は2014年からずっと選ばれ続けています。そのことが、私の教員人生としてのキャリアにおけるハイライトです。

開志専門職大学

投票で選ばれるというのは公平で、非常に栄誉なことですね。それでは、先生はなぜ人事や雇用法に興味を持ったのですか? しかもなぜホスピタリティー業界なのでしょう?

デビッド・シャーウィン

それは私の学生時代にさかのぼります。大学とロースクール(法律大学院)時代、私は自分の学費を稼ぐためにバーテンダーとして働き詰めだったのです。その経験から飲食業界の雇用や労働に関して関心を持つようになったというわけです。

スポーツ好きで活発な少年時代過ごした後 両親の勧めで大学に進学し、法律を専攻。

開志専門職大学

時間をさらに巻き戻させてください。先生はどちらの生まれで、どのような子ども時代を過ごしたのですか?

デビッド・シャーウィン

ニューヨークから50キロほど離れたニュージャージー州のウエストフィールドというところで生まれました。高校卒業までウエストフィールドで育った私は、アメリカの郊外の町にいる典型的な少年だったと思います。

開志専門職大学

典型的とは? もっと詳しく教えてください。

デビッド・シャーウィン

父は酒類販売の会社で働き、母はオフィスマネージャーというごくごく平凡な家庭に育ちました。私はバスケットボールや野球に熱中し、自転車で活発にあちらこちらに出かけて行くような子どもでした。

開志専門職大学

先生は少年時代に将来は何になりたいと思っていましたか?

デビッド・シャーウィン

子どもの頃はプロのバスケットボール選手や野球選手になりたいな、と他の子どもたちと同じように夢見ていましたよ。でも、ある時、それは現実的ではないことに気付き、スポーツ選手の夢は遠のいていきました。

開志専門職大学

そして、次に何を目指したのですか?

デビッド・シャーウィン

父も母も大学に行っていなかったので、両親は私と兄のスティーブに「大学に行きなさい。そして専門的な仕事に就きなさい」と熱心に励まし続けました。

開志専門職大学

専門的な仕事とは?

デビッド・シャーウィン

父と母の考えは、「法律の専門家」または「医者」でした。私は両親のアドバイスを聞き入れ、「法律」を選んだというわけです。

開志専門職大学

大学に進学するまでに価値観を左右するような転機となる出来事はありましたか?

デビッド・シャーウィン

そうですね、17歳の時に母が事故に遭って大怪我を負ったことが、私にとっては大きかったですね。九死に一生を得るといった経験でした。

バーテンダーとして稼いだお金で大学院まで修了 労働者としての経験とプライドが今の仕事に生きている。

開志専門職大学

命の大切さを思い知ったのですね。そして、ご両親の希望通りに進学した大学で熱中したこととは?

デビッド・シャーウィン

もちろん法律の勉強に熱中しましたよ。

開志専門職大学

勉強以外では?

デビッド・シャーウィン

趣味としてバスケットボールやソフトボールを楽しみました。でも、何と言っても、先ほど話したように、学費を稼ぐためにバーテンダーとしての仕事に打ち込んでいました。

開志専門職大学

奨学金やご両親の援助などはなかったのですか?

デビッド・シャーウィン

全部、自分で働いて稼いだお金で学費を払いました。父は私に自立するように言っていましたから。

開志専門職大学

それにしても学費をご自分で稼ぐとは大変な労力だったと想像します。若かったのですから、もっと遊びたいとか好きなことをしたいとか思うはずなのに、仕事へのモチベーションは一体どこから生まれていたのですか?

デビッド・シャーウィン

私の答えは極めてシンプルです。私たち兄弟は一生懸命働く両親の背中を見ながら育ったのです。また、両親は、私と兄が良い教育を受けることで親よりも良い暮らしができるようにと望んでいました。

デビッド・シャーウィン

そのことを私たち兄弟は良く分かっていたからこそ、大学、そして大学院を卒業したい、そのためには働かなければならないと自分たちを奮い立たせていたのだと思います。

開志専門職大学

ご自分で働いて得たお金でロースクールまで卒業したという「労働者としての経験とプライド」があるからこそ、雇用法を教えても机上の空論に終わらず、説得力があるのでしょうね。

デビッド・シャーウィン

そうですね。学業と仕事を両立できたことは私にとっての誇りです。

まだ行ったことがない日本の大都市や地方を訪ね 人事や労務の状況も専門家に会って学びたい。

開志専門職大学

さて話題を変えます。日本に行かれたことはありますか?

デビッド・シャーウィン

それが残念なことに一度もないのです。

開志専門職大学

日本についてどのようなイメージを抱いていますか?

デビッド・シャーウィン

私の中では1980年代の日本製品叩き(ジャパンバッシング)が印象的でしたね。でも、日本が世界的に経済成長を続けたからこそ、あのような現象が起こったわけです。

開志専門職大学

日本に行ってみたいですか?

デビッド・シャーウィン

もちろんですよ。これまで機会がなかったんですが、日本でやりたいことはたくさんあります。まず、大都市だけでなく地方も訪ねたいですし、ホスピタリティー業界のリーダーと言われる方々にお目にかかりたいです。

デビッド・シャーウィン

さらに、日本の人事関連のキーパーソンとも情報交換できるような機会があればうれしいです。それから日本食が大好きなので、本場の寿司も味わいたいです(笑)。

開志専門職大学

大学では日本からの留学生を教えているのでしょうか? 彼らにどのような印象を抱いていますか?

デビッド・シャーウィン

日本だけでなくアジアからの学生も大勢教えていますよ。彼らの印象は総じて真面目であり、学業に真剣に取り組む姿勢が素晴らしいと思います。勉強熱心なアジアからの学生には好印象を持っています。

開志専門職大学

それでは、シャーウィン先生が開志専門職大学で特別講師を担当していただく際にはどのようなテーマでお話ししていただけるのでしょうか?

デビッド・シャーウィン

差別をはじめとする労働に良くない環境がビジネスにどのような影響を与えるのか、アメリカの実態と法律を絡めながらご紹介したいと思っています。

開志専門職大学

アメリカの労働に関する法律は日本の随分先を行っていると聞いています。どうぞよろしくお願いします。

特別講師 デビッド・シャーウィン氏
コーネル大学ホテル・アドミニストレーション学部教授

米ニュージャージー州出身。1989年にコーネル大学ロースクール修了。1997年から2003年までコーネル大学ロースクール・オブ・ホテルアドミニストレーションの助教授、2003年より2011年まで同准教授を務めた後に2011年より現職。

インタビュー:福田恵子

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