

開志専門職大学
現在のお仕事について教えてください。
佐藤弥生
私は2019年に、それまで職員として勤務していたロサンゼルス・ドジャースを退職して、フリーランスになりました。そして、現在はスポーツ分野におけるコンサルティング業務に従事しています。


開志専門職大学
具体的にはどのようなことをされているのですか?
佐藤弥生
まず、日本のプロ野球のパ・リーグ全6球団が出資しているパシフィックリーグマーケティング株式会社の海外事業開発ディレクターを務めています。

佐藤弥生
アメリカでもパ・リーグの試合を多くの方に見ていただくために、2020年からパ・リーグ主催の試合を「FTF」というスポーツ専門チャンネルで放送しています。これは私が直接「FTF」と交渉して実現することができました。


開志専門職大学
日本のプロ野球の試合がアメリカでも見られるようになったのですね。とてもやりがいのあるお仕事ですね。ところで、アメリカでのパ・リーグの知名度はどのくらいあるのですか?
佐藤弥生
実はメジャーリーグで活躍した多くの選手がパ・リーグ出身なんですよね。野茂英雄投手、イチロー選手、ダルビッシュ有投手、田中将大投手、松坂大輔投手、それに大谷選手も。日本のプロ野球のレベルが高いということは(アメリカでも)認識されていると思います。ただし、パシフィック・リーグという名称自体はそこまで浸透していないかもしれませんね。


開志専門職大学
つまり、佐藤さんの使命は、海外でパ・リーグの知名度をさらに上げて、日本の野球の素晴らしさを伝えるということでしょうか?
佐藤弥生
そうですね。そして、これからも多くのアメリカ人がパ・リーグの試合を目にすることができるような仕組みを作っていくということです。


開志専門職大学
佐藤さんはパ・リーグのお仕事以外でも、最近、本の監修を務めたとか?
佐藤弥生
はい、中央経済社から発行されている『DX時代のスポーツビジネス・ロー入門』という本です。


開志専門職大学
どのような本なのですか?
佐藤弥生
DXを用いたさまざまなスポーツビジネスに取り組む際に関係してくる法律について解説した内容になっています。


開志専門職大学
DXとは?
佐藤弥生
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を使ってビジネスを変容させることです。


開志専門職大学
具体的には?
佐藤弥生
スポーツビジネスの分野では、たとえば「ファントークン」というものがあります。スポーツチームのファンが、チームが発行している仮想通貨を購入してトークンを所有することで、ユニフォームの色を決める時などに投票する、また特別なイベントに参加できるなどの権利を得ることができるのです。


開志専門職大学
なるほど、そういうデジタルに関わるスポーツビジネスの手法と、日本での法律がどう関わってくるかが紹介されているのですね。
佐藤弥生
DXを駆使したスポーツビジネスは、アメリカをはじめ海外の方が進んでいますから、日本の方にぜひ参考にしていただければと思います。


開志専門職大学
ビジネスや法律というと、難しそうですが。
佐藤弥生
対象は専門家だけでなく、スポーツビジネスを手がけている方、手がけようとされている方、また法律を勉強している方、また単にスポーツ好きな方にも読んでいただけるように工夫しました。


開志専門職大学
ところで、2019年まで勤務されていたドジャースで佐藤さんが何をされていたか、教えてください。
佐藤弥生
アジアでのスカウト活動や育成などチーム強化側のお仕事、また球場にある大きな看板、イベント、ブース展示などのスポンサーを探す営業の仕事や、クライアント向けのサービスなどビジネス側のお仕事両方に携わりました。さらに日本関連の仕事は、業務内容を問わず私が担当していました。


開志専門職大学
日本関連のお仕事で印象に残っていることがあれば教えてください。
佐藤弥生
印象的なお仕事は数多いですが、今となっては大谷翔平選手のスカウトに、二度失敗したことでしょうか(笑)。


開志専門職大学
現在、ロサンゼルス・エンジェルスで大活躍されている大谷選手ですね。
佐藤弥生
はい、一度目にスカウトした際は日本の球団に残留されるという決断を大谷選手が下しました。二度目は、エンジェルスに入団してしまいました。

佐藤弥生
ドジャース入団はかないませんでしたが、2021年、大谷選手は華々しい活躍をされて、私としてはとてもうれしく思っています。


開志専門職大学
ほかにも、ドジャース時代の思い出を教えてください。
佐藤弥生
手応えを感じたのは、「ジャパンナイト」というイベントを手がけたことです。


開志専門職大学
「ジャパンナイト」とはどのようなイベントなのですか?
佐藤弥生
日系にフォーカスしたファン向けのお祭りのようなイベントです。2019年の「ジャパンナイト」では、テニスの大坂なおみ選手に始球式をしていただきました。


開志専門職大学
すごいですね!
佐藤弥生
実は大坂選手は、前日の試合の始球式で投げる予定だったんです。でも、せっかく翌日が日系のイベントなので、1日ずらして「ジャパンナイト」で投げてほしいと交渉して、実現しました。


開志専門職大学
盛り上がったでしょうね。
佐藤弥生
大盛況でした。大坂選手が登場したのと同じ年の「ジャパンナイト」では、ギタリストのMIYAVIさんにアメリカ国歌を演奏していただきました。


開志専門職大学
大坂なおみ選手とMIYAVIさんを同じイベントで見られるなんて豪華過ぎます。
佐藤弥生
元々「ジャパンナイト」は、主に日系アメリカ人のお客さんを対象にしていたのですが、私が企画を手がけるようになってからは、日本からの駐在員や留学生なども含め、より幅広い層のお客さんを惹きつけるようにしました。


開志専門職大学
ジャパンナイトは佐藤さんのドジャースでの輝かしい実績ですね。
佐藤弥生
ほかにも球団に貢献できたお仕事としては、ハローキティとのコラボのプロモーションが印象に残っています。


開志専門職大学
ハローキティはアメリカでも大人気と聞いています。
佐藤弥生
はい、新規のファン獲得が至上命題だった時、私の提案でドジャースのユニフォームを着たハローキティのぬいぐるみと試合のチケットをパッケージで限定発売したのです。


開志専門職大学
ハローキティのファンがチケットを購入したのですね。
佐藤弥生
本当に嘘みたいにあっという間に、用意した1万枚が完売したんです。一番難しい新規ファンの獲得を、ハローキティで実現できました。

佐藤弥生
彼らがキティちゃん目当てで野球を見に来て、野球観戦の楽しさに気付き、リピーターになってもらうことが目的でした。


開志専門職大学
佐藤さんの狙いが当たったというわけですね。ところで、今はフリーランスの佐藤さんですが、その前にドジャースで働いていて、さらに遡るとどのようなお仕事をされていたのですか?
佐藤弥生
日本の大学卒業後はアートを扱う会社で働いていました。そこを辞めてアメリカを放浪してから、今度は東京ディズニーシー建設プロジェクトの通訳の仕事を始めました。


開志専門職大学
通訳!憧れの仕事です。
佐藤弥生
実はそれまで通訳の勉強などしたことがありませんでした。でも通訳の数が不足していたので採用してもらえたのです。さらに、仕事をしながら「習うより慣れよ」の精神で取り組みました。


開志専門職大学
ディズニーシーの次は?
佐藤弥生
ディズニーとは契約ベースでしたので、契約終了後は結婚を機に渡米し、アメリカの永住権を取得しました。そして、ロサンゼルスのアパレル関係の日系商社で働いた後、ドジャースに転職しました。その後、一度ドジャースを辞めて、香港ディズニーランドの建設プロジェクトに参加し、それが終わったらロサンゼルスに戻ってゲームの日本語ローカライズをする会社の立ち上げに加わりました。それからしばらくした後に、2008年に再び声がかかってドジャースに戻ったんです。


開志専門職大学
実にいろいろなお仕事を経験されているんですね。決断力と行動力がないとできないことですね。ところで海外にはいつから関心を持つようになったのですか?
佐藤弥生
12歳の時のロサンゼルス・オリンピックが衝撃的で、行きたいなと思ったことを覚えています。


開志専門職大学
留学はしたのですか?
佐藤弥生
はい、高校2年の夏から約10カ月、アメリカに留学しました。


開志専門職大学
英語には苦労しましたか?
佐藤弥生
実はホストファミリーとの関係がうまくいかず、私は不満を抱いていました。留学機関から説明されていた対応と全然違ったのです。

佐藤弥生
それで自分のリクエストを通すために、一生懸命、英語でコミュニケーションを取ろうとしました。


開志専門職大学
泣き寝入りせずに頑張ったのですね。
佐藤弥生
せっかく親に留学費用を出してもらってアメリカに来たのに後悔したくない、という一心でした。

佐藤弥生
結局、ホストファミリーの態度は改まることはありませんでしたが、別の留学生のクラスメイトに相談したところ、自分のホストファミリーに私を受け入れてもらえないか聞いてくれたのです。


開志専門職大学
よかったですね。ご自分の力で別のホストファミリーを勝ち取ったんですね。
佐藤弥生
あの高校時代の留学経験が私にとっての大きな転機になったと思います。


開志専門職大学
それでは、佐藤さんから今の高校生に「大学の間にやっておいた方がいいこと」をアドバイスするとしたら何と言いますか?
佐藤弥生
本来であれば「海外旅行に行ってください」と言いたいところです。

佐藤弥生
私自身も海外旅行が大好きなんです。でも、今はコロナ禍で自由な旅行ができません。ですから「Netflix」などの動画配信サービスで旅行番組を見て、行った気分になってイメージトレーニングをするといいと思います。


開志専門職大学
なるほど。それは楽しそうですね。
佐藤弥生
できれば海外制作の番組を英語で見ることをお勧めします。字幕を出したり、英語が聞き取れなければ巻き戻して聞き直したりすることで、旅の気分を楽しむだけでなく、英語の勉強にもなります。

佐藤弥生
あとは、ぜひインターネットで海外のニュースを見てほしいですね。日本のテレビなどで報道される海外情報はほんの一部です。今は海外に行くことが難しいので、せめて海外のニュースに積極的に触れてほしいと思います。


開志専門職大学
海外に向けてアンテナを意識的に張らなければいけませんね。
佐藤弥生
開志専門職大学の事業創造学部、情報学部、アニメ・マンガ学部のどの学部で勉強するにしても、その先にあるお仕事は、今の時代、海外にも目を向けないと市場が広がらないと思います。


開志専門職大学
日本国内にしか興味がないようでは難しいということでしょうか?
佐藤弥生
海外に出ることでチャンスが大きく拡がることは確実ですし、若いうちにぜひ一度は海外市場に挑戦してほしいです。


開志専門職大学
次に佐藤さんご自身の今後の目標を教えてください。
佐藤弥生
お話ししたように、私は日本、アメリカ、香港で働き、いろいろな仕事を経験してきました。今は会社勤めを卒業し、独立した身として、これまでの経験や自分の考えを自由に発信できる立場になりました。

佐藤弥生
そこで、これからはスポーツ分野における日米の架け橋的な役割を務める一方で、後進に私の経験をシェアしていきたいと考えています。


開志専門職大学
それでは、開志専門職大学の特別講義でも、これまでのドジャースやディズニーで働いた経験を話していただけるのでしょうか?
佐藤弥生
実際に私自身が経験した仕事の内容を掘り下げて、その中で皆さんが学んでいる専門職に多少なりとも関連のありそうなことにもスポットを当て、学生さんたちに分かりやすく解説したいと考えています。

佐藤弥生
私はゲーム業界でも働いていたので、例えば「キャラクタークリエイター」とお仕事をした話などは、アニメ・マンガ学部の学生さんにも興味深いかもしれませんし。

佐藤弥生
学生の皆さんがご自分の将来の仕事をイメージする時に、少しでも参考になるような、現実的で具体的なお話をさせていただきたいです。


開志専門職大学
佐藤さんの特別講義、とても楽しみです。どうぞ、よろしくお願い致します。
特別講師 佐藤弥生氏
名古屋市出身。高校2年時にカリフォルニア州に留学。日本帰国後、慶應義塾大学に進学。大学卒業後は日本国内のアート関係の会社に就職し、3年半後に退職。その後、アメリカ全土を半年かけて一人旅で周遊した後に、東京ディズニーシーの建設プロジェクトの通訳として勤務。契約終了後に滞在したロサンゼルスで結婚し、アパレル系商社を経てドジャースに採用される。1年後に退職し、香港ディズニーランド建設プロジェクトに参加。帰米後、オンラインゲームの日本語ローカライズを手がける会社の立ち上げに参加。2008年に声がかかり再度ドジャースへ。2019年に退職し、現在はパ・リーグの海外事業開発に携わる仕事をはじめ、フリーランスとしてスポーツに関するコンサルティング業務に従事。

