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旅行業界が厳しい局面を迎えたコロナ禍。 新規事業を立ち上げ、日本の生酒を米市場へ。 小竹寿英氏

旅行業界が大きな影響を受けることになったコロナ禍中に、日本の物産をアメリカ市場に持ち込む新規事業を立ち上げた旅行会社のH.I.S.。その新会社H.I.S. Trading USA Inc. の代表に就任し、「日本のセールスマン」として奮闘している小竹さんに、海外での仕事のやりがい、日本の若い世代に伝えたいメッセージを伺いました。
旅行業界が厳しい局面を迎えたコロナ禍。新規事業を立ち上げ、日本の生酒を米市場へ。

開志専門職大学

小竹さんのお仕事について教えてください。

小竹寿英

私は旅行事業を中心に行っているH.I.S.に所属しております。皆さんもご存知のように、2020年以降、世界は新型コロナウイルスの影響を受け、旅行会社のH.I.S.も厳しい局面を迎えました。私自身、この業界に入って24年が経ちますが、ここまで事業がウィルスの影響を大きく受けた経験はありませんでした。

小竹寿英

そこで、H.I.S.としてもこの時期を乗り越えていくために、新規事業を立ち上げました。私は今、その事業の責任者として、日本酒のアメリカへの輸入販売を手がけています。

開志専門職大学

その新規事業は、具体的にはどのような事業ですか?

小竹寿英

日本の生酒(加熱処理を施していない日本酒)をケグという、フレッシュな状態を長期間維持できる特殊容器に入れて、アメリカに輸入するという事業です。日本酒はアメリカでも非常に人気ですし、生酒をアメリカに持ってくるということでは先駆けとなりますので、挑戦しがいのあるビジネスだと思っています。

開志専門職大学

この新規事業は小竹さんのアイデアなのですか?

小竹寿英

これは日本本社の発案です。フードプロジェクトの一環として、いかに日本の物産を海外に広めていくかという取り組みの中で生まれました。

小竹寿英

しかし、まだ販売が始まっているわけではありません。ライセンスの取得やラベルの登録などやるべきことがたくさんあります。

開志専門職大学

準備が大変なのですね。

小竹寿英

日本の場合はライセンスを取得すれば、それが全国で通用します。しかし、アメリカは州によってアルコールの取り扱いの法律が異なります。ですから、全米で一気に発売開始というのは現実的ではなく、段階的に市場を広げていくことになります。

開志専門職大学

アメリカは広いということでしょうか。

小竹寿英

そうですね。州ごとにルールが異なるということで、それぞれ違った手続きが必要になります。それでも、2022年中には販売ができるようになる見込みです。

開志専門職大学

どこで、その生酒を飲むことができるのですか?

小竹寿英

レストランやバーなどの飲食店です。生ビールを飲食店で提供するようなイメージですね。多くのアメリカのお客様に喜んでいただけることを期待しています。

大学時代のアメリカや中国への旅を契機に 海外で通用する人間になりたいと思い、H.I.S.に転職。

開志専門職大学

事業の今後の展開が楽しみですね。ところで、もともと小竹さんが従事されていた旅行業は最近、どのような状況でしょうか?

小竹寿英

最近、日本国内では国内旅行に関するお問い合わせが増えています。長い間、旅行好きな方々は我慢を強いられてきましたので、リスクがなくなってきた頃には一気に旅行熱が再燃するのではないかと考えています。

開志専門職大学

早く自由にいろいろなところに行けるようになるといいですね。さて、小竹さんご自身が旅行会社に就職を決めた理由は何だったのですか?

小竹寿英

私は新卒で別の会社で働いていたのですが、どうしても海外で働きたいという思いがありました。それで、仕事で海外に行くにはどうしたらいいだろうと思っていた時に、H.I.S.のアメリカ法人の求人広告が目に止まり、応募したのです。旅行会社で働きたいというよりも、海外で働く機会を求めて旅行会社に入社したのです。

開志専門職大学

もともと、海外で働きたいと思うようになったのはなぜですか?

小竹寿英

大学時代に中国やアメリカを旅行した時に、その広大な環境の中で通用するような人間になりたい、こんな国で働けるようになりたいと思ったことがきっかけです。

開志専門職大学

それで、H.I.S.に転職されて晴れてアメリカに渡ったのですね。

小竹寿英

はい、最初はボストン支店に6年、次にニューヨークに6年、そして現在のロサンゼルス勤務が12年になります。ですから海外生活は24年です。

アメリカ人の団体旅行客を率いて日本へ。日本をポジティブにとらえてもらう機会が作れたことに手応え。

開志専門職大学

H.I.S.でのこれまでに携われたお仕事の中で一番手応えを感じたものは、どのようなことですか?

小竹寿英

私は長年、アメリカ人のお客様が日本に団体旅行に出かける際の担当をしていました。100人から200人という大人数の団体旅行です。日本の物産や文化を、アメリカ人のお客様に紹介することで、それまで彼らが深く知ることのなかった日本についてポジティブにとらえていただく機会を作れたことが、手応えであり、大きな喜びにつながりました。

開志専門職大学

旅行の企画だけでなく、実際にその大人数の旅行者を日本に連れて行ったのですか?

小竹寿英

そうです。ですので、お客様と直に触れ合うことができました。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のアンダーソンスクールのご一行を日本にお連れした際には、ステレオタイプな日本をご紹介するのではなく、ツアー内容にも趣向を凝らしました。

開志専門職大学

どのようなツアーがアメリカの学生さんに人気でしたか?

小竹寿英

京都を訪れた時のツアーで、日本酒の酒蔵ツアーと、山崎のウィスキー工場訪問がすぐに売り切れました。

開志専門職大学

アメリカのワイナリーツアーのような感覚でしょうか?

小竹寿英

まさにそうですね。アメリカ人の旅行客が酒蔵にここまで興味があるとは、とうれしい驚きでした。

開志専門職大学

ところで、現在は新規事業でお忙しい毎日だと思いますが、コロナ禍の影響で働き方は変わりましたか?

小竹寿英

はい、以前はロサンゼルスのダウンタウンにあるオフィスに出勤していましたが、今は在宅勤務がベースになりました。ただし、私の場合、生酒の新規事業の売り込みのためにネットワーク作りが重要な任務ですので、レストラン関係のイベントなどに顔を出すことが多いです。

開志専門職大学

人脈作りが重要なのですね。

小竹寿英

旅行の仕事も、アメリカ人のお客様に日本を紹介するというミッションがあり、今取り組んでいる新規事業も日本の食文化をアメリカ市場に紹介するというものです。大げさかもしれませんが、自分が「日本のプレゼンター」を務めていると自負しています。

開志専門職大学

日本の物産や文化のファンを増やすお仕事ですね。

小竹寿英

そうありたいと思っています。ひいては、日本という国の事業の発展にも寄与できる仕事であり、さらには日本という国のイメージアップやステータスを上げることにも貢献したいと思います。先ほどは「日本のプレゼンター」と申し上げましたが、もっと分かりやすく言うと「日本のセールスマン」です。そこにやりがいを感じています。

H.I.S.の企業風土は「新しいことへのチャレンジ」。新規事業を行動に移すのも早かった。

開志専門職大学

H.I.S.は大手旅行会社というイメージですが、いろいろ々なビジネスに挑戦する会社なのですね。

小竹寿英

H.I.S.はテーマパークやホテル経営、飲食、ロボットとさまざまな分野に進出しています。

開志専門職大学

その会社に24年、ずっと海外で勤続している小竹さんから見て、H.I.S.の素晴らしさとは?

小竹寿英

新しいことへのチャレンジの機会を提供してくれることでしょうか。それが企業風土です。

開志専門職大学

会社員というよりも起業家の集まりのような会社ということですか?

小竹寿英

そういう考え方もできると思います。特に起業家精神を持つ人が多いと実感したのは、このコロナ禍でした。

開志専門職大学

それはどういうことですか?

小竹寿英

会社として、このコロナ禍で旅行の売り上げが立たない時期が続きました。そのような時に、ただ受け身でいるのではなく、「この状態で一体何ができるか?」という考え方に多くの社員がシフトして、さらに実際に行動を起こすまでが早かったのです。

小竹寿英

そして、私が今取り組んでいる日本の物産をアメリカ市場で展開するという商社としてのビジネスも含めて、事業の多角化を積極的に推進しました。

開志専門職大学

社員の皆さんが前向きなのですね。

小竹寿英

はい、多くの人がコロナ禍の状況に負けずに、この大変な状況の中でしっかり前を見据えて頭を転換して行動に出たのです。自分としてもこのような会社の中に身を置くことができて良かった、恵まれていると思います。

学生時代にワクワクできることを見つけてほしい。時間が過ぎるのを忘れるほど夢中になれること。

開志専門職大学

では、次に、これから大学生になる方々に、小竹さんから学生生活の間にやっておくべきことをアドバイスしてください。

小竹寿英

私自身が歳を重ねたからだと思いますが、最近になって、若い頃に人から「ああしなさい、こうしなさい」と言われていた言葉の意味がやっと分かるようになりました(笑)。

開志専門職大学

若い時はピンと来ていなかったのですね。では、社会経験を豊富に重ねた小竹さんが、実感を持って伝えたい「後悔しない学生生活の過ごし方」を教えてください。

小竹寿英

やはり、自分自身が何をしている時がワクワクするのか、ということを学生の間に知っておいてほしいと思います。自分が高揚感を持って取り組めることは何だろう、ということです。

小竹寿英

つまり、モチベーションを高く維持するためには、どんなに忙しくても前向きに楽しくその仕事に取り組めることが条件になるのです。もっと言えば、時間が過ぎるのを忘れるほど夢中になれることです。それが何なのか、若いうちに発見してほしいと思います。

開志専門職大学

それを見つけるためにはどうしたらいいのですか?

小竹寿英

一カ所に留まることなく、外に出かけていろいろな人と交流してください。そういう活動の中で見えてくるものがあるはずです。

開志専門職大学

最後に、開志専門職大学での特別講義で、何をお話しいただけるのかを少しだけ教えてください。

小竹寿英

私が海外で働きたいと思うようになったきっかけは、大学時代にアメリカや中国に旅行したことでした。自分が知らない世界を見て、こういう外の世界でも自分が通用する人間になりたい、とその時思ったことが現在につながるスタート地点だったのです。

小竹寿英

ですから、学生の皆さんの将来が充実したものになるように、私の経験や考え方をお話しすることで、少しでも何かの発見や新しい価値観との出会いにつながるといいな、と思っています。そういうお話をさせていただきます。

開志専門職大学

ありがとうございます。それではどうぞよろしくお願い致します。

特別講師
小竹寿英氏
H.I.S. International Tours, Inc.
シニアマネージャー
H.I.S. Trading USA, Inc.
プレジデント

香港で生まれ、東京都稲城市で育つ。大学卒業後に旅行会社H.I.S.の海外現地スタッフ募集の新聞広告を見て応募。同社に採用され、1998年にアメリカ・ボストンで勤務開始。 ニューヨーク支店を経て現在はロサンゼルス支店勤務。インバウンド、アウトバウンド、総務、経理など多様な職務を経て在米企業や団体の日本行き旅行を企画、営業、運営する部門の責任者を務めると共に、新規事業の商社の代表も兼任。在米歴24年。


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