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21歳でデビュー。『隣人13号』、『TOKYO TRIBE(トーキョートライブ)』は映画やアニメ作品に 井上三太氏

『隣人13号』や『TOKYO TRIBE』といった一世を風靡(ルビ:ふうび)した作品で知られる漫画家の井上三太さんは現在ロサンゼルスに拠点を移して活動しています。漫画を描き、ファッションブランドをプロデュースし、さらにYouTubeを通じて自らのロサンゼルス生活について発信している井上さん。21歳でデビューしてから漫画家として30年以上第一線で活躍を続けながらも、50歳で渡米を決断し、実行に移した井上さんの目的とは? ロサンゼルス郊外にある仕事場兼自宅でお話を伺いました。
21歳で漫画家デビュー。時代の変化を感じ取り 裏原宿ブームをきっかけにファッション業界にも進出。

開志専門職大学

井上さんのお仕事について教えてください。

井上三太

漫画家として21歳の時にデビューして30年間やっています。『隣人13号』、『TOKYO TRIBE(トーキョートライブ)』という漫画を描いていて、映画になったり、アニメ作品になったりもしています。

井上三太

さらに洋服の会社SANTASTIC!(サンタスティック)も経営していて、以前は渋谷に15年間店舗がありました。3年前にビザを取ってアメリカに引っ越してきた時に、日本の会社やお店を閉めましたが、今はハリウッドで映画を作りたいと思って取り組んでいます。あとはオモチャのプロデュースもしています。

開志専門職大学

これまでのお仕事で手応えを感じたものは何ですか?

井上三太

『隣人13号』、『TOKYO TRIBE』の漫画と、さらに漫画以外のビジネスに進出したことです。20年前、僕のアイデアでビジネスを始めました。

井上三太

洋服に関して言えば、20代の前半に僕の友達が洋服の店を原宿で始めて、それが裏原宿というブームになっていくのを間近に見ていて、漫画を描いているから(洋服の)グラフィックが描けそうだなって思ったことが進出した理由です。

井上三太

あと、日本はアニメとか漫画のセンスは進化しているんですけど、それをマーチャンダイジング、つまり衣類などの商品にする時に漫画やアニメのセンスとは乖離(ルビ:かいり)しているな、と常々思っていたんですね。ミッキー・マウスのTシャツは着たりしますけど、日本の漫画のTシャツが普段着として着られるっていうことがあまりないじゃないですか。

開志専門職大学

だから漫画家の自分が(Tシャツを)手がければ成功するはずだということですね。

井上三太

「成功した」とは自分ではあまり簡単に「はい」とは言えませんが(笑)。でも少なくとも、昔は洋服作るって言ったら師匠の下で修行したり、ファッションの学校に行っていないとブランドは持てなかった。

井上三太

ところがマッキントッシュ(Apple社が製造したPC)が登場してから、ソフトを使えばTシャツにグラフィックを載せることができるようになりました。そういう新しいことをしている友達を横目に見ながら、自分でも自分の絵を(Tシャツに)落とし込んでプロデュースしたいと思うようになったんです。

開志専門職大学

多才ですね。

井上三太

僕が洋服を始めた頃にはすでに出版業界が変化していました。今では本屋も少なくなっていて、電子書籍の波に気付いていた出版社と、のんびりしていた出版社では差が出ています。一時期は連載のギャラと単行本の印税で食っていけた時代があったんですけど、それは30年前の話です。

開志専門職大学

時代の変化を確実に読み取っていたのですね。

井上三太

時代は変化しています。最近ではYouTuberという仕事が出てきていますし。世の中の変化というものは激しいんで、漫画を描く以外にも自分で洋服を作ってみたり、こんなオモチャがあったらいいなと思ったら一からデザインしてオモチャを作ってみたり。

「ヒップホップと漫画の化学調合」に絶対的な自信 自作のハリウッドでの映像化目的に渡米。

開志専門職大学

漫画も洋服もオモチャも作っていた井上さんが、3年前に拠点をアメリカに移した理由は映画作りが目的だったのですか?

井上三太

ハリウッド映画の世界で、特殊美術とかメイクアップとか細かい分野では活躍している日本人はいますよね。でも、日本の監督さんでアメリカの映画人と一緒に映画作りをやっている人はいるのかな、苦戦しているんじゃないかなと思ったんです。韓国のポン・ジュノ監督は『パラサイト』で国際的な評価を獲得していますけどね。

開志専門職大学

井上さんもハリウッドで監督になりたいということですか?

井上三太

実は僕の漫画の『隣人13号』の映画化の権利をハリウッドの映画会社が買ったんですよ。ところが実際には、プロデュース面での問題やお金の問題などが生じてきて、なかなか先に進まない。

井上三太

最近、知的財産のことなんかを勉強しているんですけど、映画でなくても配信サービスでドラマになったりする可能性もあるじゃないですか。そういうものを真面目に作っていきたいと思っているんです。

井上三太

関わり方として監督ができるんだったらやってみたいし、何が何でも監督じゃないと嫌だというわけではないです。ただ、今は自分の作品を映像化してくれたらありがたいという気持ちです。

開志専門職大学

可能性は感じていますか?

井上三太

僕の漫画はヒップホップのカルチャーを描いていて、ここアメリカだとヒップホップの市場って大きなマーケットになっているんですよ。日本でも広がっているって言う人はいるけど、まだまだです。

井上三太

自分としては、世界で一番上手にヒップホップと漫画を化学調合できるのは僕だと思っています。それをアメリカで証明したいんです。

開志専門職大学

映画か配信サービスかにこだわらずに、井上さんの作品の世界観をハリウッドで映像にして残したいのですね。

井上三太

配信サービスでも、いいヒップホップのアニメが少ないような気がするんですね。僕が手がければナンバーワンになれないかもしれないけど、オンリーワンになれる、そう思っています。

井上三太

例えばSNSをアップしても何人に見られたかということが大事なんじゃなくて、3人しか見てないけども人生を変えるような衝撃を与えているかもしれない。一瞬インスタを見ただけの1000人と、人生を変えられた3人、そのどっちのメッセージが深いかって話なんです。

好きなものを発見できるかどうかが大事 「伝えたいこと」があってこそ作品に芯ができる。

開志専門職大学

今、アメリカ生活を送っている井上さんですが、生まれたのはフランスだとか?

井上三太

父が画家で、その関係でパリで生まれました。9歳の時に日本に帰国するまでは現地の学校に通っていました。フランス語はほとんど忘れてしまいましたが、発音だけはいいですよ(笑)。

開志専門職大学

漫画家になろうと思ったのは画家のお父様の影響ですか?

井上三太

父の影響もあって絵を描くのがとにかく好きでした。フランスにいた時にはウォルト・ディズニーになりたいって言っていました。

井上三太

なぜ、漫画家になったかと言うと、それはもう漫画が好きだったからに尽きるんですけど。やっぱり人間って好きなものを発見できるかどうかが大事だと思うんですね。

開志専門職大学

井上さんは幼い頃に好きなものを発見できたんですね。

井上三太

好きなものって親に強制されてやったりすることじゃなくて、何時間も没頭できるものですよね。僕は漫画が好きで、それを描き始めて自分でも向いていると分かりました。父親も(漫画を描くことを)応援してくれました。

開志専門職大学

そしてデビューして30年も続けていることは本当に素晴らしいと思います。

井上三太

30年経ったんですが、才能論で言えばもっと僕より絵が上手い人もいるかもしれない、面白い話を作る人もいるかもしれない。でも、何を伝えたいかってことが一番大事だと思います。

井上三太

難しい言葉になってしまうけど「哲学」がないと作品は弱くなってしまう。何を伝えたいかをキャラクターの中に入れないと芯のない作品になってしまうんです。

開志専門職大学

読者に伝えたいことがあるから漫画を描くんですね。

井上三太

漫画家になりたいから、じゃなくて、言いたいことがあるから漫画を描く、ということです。

山には自分で登るしかない 成功の確証はないが、後悔だけはしたくない。

開志専門職大学

話をフランスに戻すと、9歳までフランスで育ったことが井上さん自身に与えた影響とは?

井上三太

まず、50歳の時にアメリカに来たわけですが、フランスに幼い頃いたということで、海外に出るハードルが低かったというのはあるかもしれないです。初めて日本を出るわけではないので。

井上三太

あとは自分の根底にある色のセンスとか、ものの考え方に、フランス的なユニークな何かが影響を与えていると思います。「三つ子の魂、百まで」ですね(笑)。

開志専門職大学

9歳で日本に帰国した時に、日本に適応するのが難しくはなかったですか?

井上三太

海外帰国子女が通う学校に入りました。そこで初めて日本の都道府県や九九を勉強したりしていましたね。

開志専門職大学

時は流れて、日本で漫画家になっていろいろな事業を手がけた後に、50歳でアメリカに拠点を移したわけですが、アメリカでの仕事の手応えはいかがですか?

井上三太

今まさに試行錯誤している最中です。(作品の)映像化に向けてプロデューサーと会ったりはしていますが、結構大変だなと思っている時期ですね。日本ではアニメや漫画で「クールジャパン」をうたっていますけど、映画でももっと成果が出せると思います。

井上三太

僕にしたら漫画とは違う映画の業界に挑戦していて、しかも国境もまたいでいるので、今苦戦している状況の中、成功する確証はどこにもないです。やめておこうと退散する選択肢もあるけど、後悔だけはしたくないなって思っています。

開志専門職大学

アメリカに拠点を移すことはいつ頃から考えていたのでしょう?

井上三太

10年くらい前ですね。こっちの業界の人に「住んだ方がいいよ」と言われたんですよ。それから、数年前にサンディエゴのコミコン(漫画とアニメ関係の見本市)に行った時に僕が作ったキャラの格好しているアメリカ人がいたことでも、背中を押されました。

井上三太

それに『TOKYO TRIBE』がアメリカで受け入れられるんじゃないかなって口で言っているだけだと意味はない。だからアメリカに来ようと思ったわけですが、ビザ取れるかな、家族は一緒に来てくれるかなという不安はありました。

開志専門職大学

不安はあってもやりたいという気持ちが上回ったということでしょうか?

井上三太

そう、アメリカには自分が行くべきだという強い気持ちですね。これまで、漫画家になりたいと思った夢も叶ったし、僕の作品がアニメになったらいいなという夢も叶いました。

井上三太

自分を信じ続けることが大事だと思うんです。自分で山に登るしかない。まだ山の途中ですけど、他人にそのことをどうこう言われても、その人は山に登ってないわけですからね。

特別講義では「諦めない心」の大切さを伝えたい 漫画家になる方法やそれを続ける方法も指南。

開志専門職大学

では、ハリウッドでの夢に向かって奮闘中の井上さんから、これから開志専門職大学の学生になる人たちに大学の4年間でやっておいた方がいいことをアドバイスしてください。

井上三太

まず、「生きる」ってことをした方がいいと思います。恋をしたり、友達を作ったりね。人間関係を作ったり。そういうものの蓄積が人間のドラマを作るんです。

井上三太

好きな人に振られても、なぜ振られたんだろうって考えることで、次の恋愛をした時に相手の気持ちをもっと考えてみようということで生かされます。そういうことがないと何のドラマも作れません。一生懸命生きてほしいです。

開志専門職大学

井上さん自身の究極の目標は何でしょう?

井上三太

それを聞かれると、本当のところは「幸せになる」ことです。当面の目標はおっしゃるように映画なんですけど、それで成功してお金が入ってきても、奥さんと娘と一緒に幸せじゃないと意味がないですから。

井上三太

でも、もう幸せかもしれないです。幸せって青い鳥でしょう。チルチルミチルの話です。いろんなところを青い鳥を探してさまよった挙句に家に帰ってみたら、そこに青い鳥がいたというお話ですよね。

開志専門職大学

身近なところに幸せはあるのですね。

井上三太

そうですね。映画っていうのは分かりやすい目標ですね。それから、いい漫画を描き続けるということも目標。いい漫画を描いて、ちょっと焼き鳥食べに行くだけでも幸せです。そういうことを真面目にやっていたら、ある時、目に止まって向こうから声がかかるかもしれないと思って、コツコツとね。

開志専門職大学

続けないと夢は掴めないということですね。さて、最後の質問です。開志専門職大学の特別講義でどういうお話をしていただけるのでしょうか?

井上三太

まず、「諦めない心」がいかに大切かというメッセージを送りたいです。それから、漫画家になる方法について教えることができます。漫画に限らず、ものづくりに必要なことは何か、何が大事かということです。

井上三太

また、プロになるための心がけ、何から始めたらいいのか。そして、漫画家を含めてプロになったからには、それをどうやって継続させるかということもお話できます。僕が30年間、漫画家を続けているという経験に基づいて話します。

開志専門職大学

ありがとうございます。とても楽しみです。そして、井上さんの作品がハリウッドで映像作品になることを楽しみにお待ちしています。

特別講師 井上三太氏

漫画家
フランス・パリ生まれ。9歳で日本に帰国。21歳でヤングサンデー新人賞を受賞し、漫画家としてデビュー。代表作『TOKYO TRIBE』はアニメ化された。本業の漫画家以外にもファッションブランドSANTASTIC!のプロデュースを手がける。2017年には活動の拠点をロサンゼルスに移し、ロサンゼルス生活を漫画コラムやYouTubeを通じて発信中。

インタビュー:福田恵子
撮影・動画:安部陽二

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