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日本発の飲食ブランド「つるとんたん」や「KINTAN」をアメリカ・ヨーロッパに展開し新しい食文化を拡大。 早川宗徳氏

ハワイやニューヨークで見かける日本発のうどん屋さん「つるとんたん」。店頭には行列ができ、海外での日本食人気を象徴しています。そんな日本の飲食ブランドを海外に広める仕事をしているのが、「ダイニングイノベーション ノースアメリカ & ヨーロッパ」でPresident/CEOを務める早川宗徳さんです。20歳で5万円だけを手にして海外に飛び出した早川さんに、仕事のやりがいやご苦労など海外での働き方についてお話を伺いました。
習慣、常識、宗教、仕事への考え方が違う各国の人々とチームを組み、リードしていく難しさと達成感が魅力の仕事。

開志専門職大学

お仕事についてお教えてください。

早川宗徳

私はダイニング・イノベーション・ノースアメリカ & ヨーロッパに所属し、北米(アメリカ・カナダ)では、うどんの「つるとんたん」、ヨーロッパでは焼肉の「KINTAN」の店舗展開を行っています。日本の飲食ブランドを海外で広め、展開するというのが主な仕事です。

開志専門職大学

グローバルなお仕事ですね。

早川宗徳

はい。うどんの「つるとんたん」も焼肉の「KINTAN」も日本の飲食ブランドですが、グローバルに展開中です。現在「つるとんたん」は、ニューヨークに2店舗、ボストンに1店舗、ハワイに1店舗。焼肉の「KINTAN」はイギリスのロンドンに2店舗あります。

開志専門職大学

日本語の通じない海外で日本のブランドを広めるのは大変そうですね。

早川宗徳

全く日本語が通じない人たちと英語を使いながら、コミュニケーションを取り交流してきました。アメリカ、カナダ、ヨーロッパは、世界中のあらゆる国からの移民で成り立っています。英語ですらお互いがうまく話せず、理解し合うのは大変でした。

開志専門職大学

そんなご苦労のなか、このお仕事のやりがいは何ですか?

早川宗徳

お客様の喜ぶ顔を間近で見られるということです。反応が直接伝わってきます。ニコニコ笑いながら食事をしているなら、おいしいと思ってくれていると感じ、ちょっと無口で皆でむっつりしながら食事をしているなら、おいしくなかったのかな、サービスが悪かったのかと反省します。飲食業はフィードバックが直接入ってくる商売。お客様から直接意見を聞けるので励みになります。

開志専門職大学

お客様からお褒めの言葉をいただけると、本当にうれしいですよね。

早川宗徳

はい、この仕事をしていて良かったと思える瞬間ですね。他にもやりがいと言えば、その国や地域に今まで無かった日本の新しい食文化を紹介できることです。

開志専門職大学

日本の食文化はあまり広まっていないのですか?

早川宗徳

例えば焼肉は、日本、韓国には多くの店があります。アメリカやヨーロッパでは個人店はありましたが、私が店を展開し始めるまではチェーンとしては全く存在していませんでした。

開志専門職大学

アメリカでは屋外でのバーベキューは一般的ですが、屋内で食べる焼肉はなじみがなかったのですか?

早川宗徳

アメリカの人たちにとって、室内で、目の前で、しかも自分で肉を焼いて食べるという習慣はなかったのです。だから、「そんな食べ方があったんだ」、「こんな新しい食べ方の料理を持ってきてくれてありがとう」と言われたり、「君たちのお陰で1カ月に何回か、この店に来ることができて本当にうれしいよ」と言われてうれしかったですね。全く今までに経験したことの無いものを、私たちが日本から持ってきて紹介する。この仕事にはそういった魅力があります。

開志専門職大学

早川さんと言えば、北米に焼肉レストランチェーン「牛角」の店舗を広め業界では立役者と語り継がれていますね。

早川宗徳

北米の牛角の代表を退任するまでの18年間で、42店を開けました。

開志専門職大学

すごいですね。長く続けて実績を残せたのは、そのお仕事にやりがいがあったのでしょうね。

早川宗徳

習慣、常識、宗教、仕事への考え方などが、それぞれ違う各国各地域の人々をチームとして引っ張り、各国の店舗を繁盛させることで、達成感を味わえます。成功の喜びを現地の従業員の人たちと分かち合いながら、「自分たちもこのチームに参加させてくれてありがとう」なんて言われると本当にやりがいを感じます。

競争の激しい日本のフィールドでは勝てないと思い、20歳の時に5万円を握りしめてハワイへ。

開志専門職大学

どんな幼少時代を過ごされましたか?

早川宗徳

小さい時から好奇心旺盛で、いろんなものに興味を持っていました。小学生の頃にアメリカ発の自転車レースを始めました。そのため「アメリカはどんな国なんだろう」といつも思っていました。

開志専門職大学

小さい頃からアメリカに興味があったんですね。

早川宗徳

初めてアメリカに行ったのは、高校1年生の時で自転車レースの競技に出場するためでした。その時、雄大なアメリカを見てびっくり。「広々とした所で、みんなのんびり暮らしているんだな」という印象でした。一カ月ぐらいかけて、カリフォルニア、ペンシルバニア、ニューヨーク、ワシントンを周りました。

開志専門職大学

このアメリカの旅は、その後の生き方に影響しましたか。

早川宗徳

はい。観光とホテルの専門学校で学んだ後、20歳の時にハワイに行きました。

開志専門職大学

当時の夢は何でしたか。

早川宗徳

学生の時は「金持ちになりたい」としか考えていなかったです。私が若い頃は、Benihana(紅花)という寿司&鉄板焼きの一大レストランチェーンを展開し、アメリカ日本食ブームの立役者として有名なロッキー青木氏が活躍。アメリカには「アメリカンドリーム」があると思いました。

開志専門職大学

アメリカ社会なら、才能と努力次第で成功できそうに思えますね。

早川宗徳

私が成人したのはちょうどバブルの時。ベビーブームでもあり、本当に競争が激しかった。大企業に入るために一流大学に入るのを目指して頑張ってきた人たちがいる中、専門学校しか出ていない自分が、大卒の人たちと競争しても、日本のフィールドでは勝てないと思い、20歳のときに5万円を握りしめてハワイに行きました。

開志専門職大学

何から始められたのですか。

早川宗徳

最初は飲食店でバスボーイ(食器を片付ける仕事)から始め、27歳の時には自分で貿易業をスタート。31歳の時に「牛角」の創業者がハワイに来ていて、「アメリカ本土とハワイで展開するから一緒にやらないか」と声をかけられたんです。それがきっかけで、まずハワイで「牛角」を開くことになりました。

開志専門職大学

すごい!ヘッドハンティングですね。

早川宗徳

アメリカで展開することは夢があって楽しそうだったので、すぐに同意しました。「牛角」の創業者に「今までハワイにお世話になったのなら、日本からおいしい外食を持ってきて、ハワイの人たちに喜んでもらって恩返しをしようよ」と言われました。その言葉に感動しました。

当初はうまくいかなかったアメリカ本土での展開。ある日ハリウッド・セレブが食べに来てから人気に火が付いた。

開志専門職大学

このお仕事から得られたものは何ですか?

早川宗徳

アメリカは移民の国なので、世界各国の人たちの考え方や価値観を仕事を通して勉強できました。視野が広がりました。

開志専門職大学

このお仕事でうまくいかないこともありましたか?

早川宗徳

ハワイで2店舗「牛角」を成功させたのですが、ハワイはマーケットが小さい。なので、日本の25倍の大きさのあるアメリカ本土に移りチャレンジしましたが、ハワイのようにうまくいきませんでした。

開志専門職大学

それは、なぜですか?

早川宗徳

アジア人の多いハワイと違ってアメリカの本土は白人が多く、焼肉を理解してもらえませんでした。やり続けながらちょっとずつ成功してある日、レオナルド・ディカプリオやマライア・キャリーなどのハリウッド・セレブが食べに来てくれるようになって一気に火がついたのです。最終的には、北米の「牛角」の代表を退任するまでの18年間で、42店を開けました。

世界には活躍できるフィールドがたくさんある。そのフィールドを選べる自分になるための準備が必要。

開志専門職大学

学生の皆さんにアドバイスはありますか?

早川宗徳

学生のうちにできるだけたくさん海外に行ってください。他国のインターンシップに挑戦したり、海外旅行をしたり。日本人観光客の多いリゾート地ではなく、その国の生活が見られるような場所に行くことをお勧めします。「どういう仕事をしているんだな」とか、「どういう感じで働いてるんだな」とか、そういうのをその国の人たちの顔を見ながら想像することが大事です。インターネットやテレビ、YouTubeで見るのではなく、実際に自分が行って自分で感じ取ってください。

開志専門職大学

他にもありますか?

早川宗徳

先ほどと似ていますが、日本にいる外国人の人たちとできるだけたくさん接して、常識、価値観、お金に対する考え方などを学んでください。「あなたの国だったらどうなんですか」という視点で彼らと接して意見を聞き、いろいろな文化や風習を想像できるようになると、世界に羽ばたけるチャンスも見えてくると思います。

開志専門職大学

異文化やさまざまな国の人々に多く触れるのですね。

早川宗徳

特にお金に関する考え方などは、日本と海外では全く違います。日本ではお金のことを話すことは好まれません。海外の人たちは全然そうじゃなくて、お金が自分を評価してくれると考えます。

開志専門職大学

日本人同士でお金の話をするのはためらわれますね。

早川宗徳

メジャーリーガーもそうですが、海外では、「あなたにこれだけの給料を出しますからうちの会社に来てください」というようなオファーがいくらでもあります。お金は自己の評価に関係します。より良い環境、より良い条件で自分を迎え入れてくれることにつながるので、外国人のお金に対する考え方をしっかり学んでおくべきだと思います。そうすれば海外に出て損することが減るでしょう。

開志専門職大学

損はしたくはないですね。

早川宗徳

いろんなオファーを受けた時に日本人は遠慮しがちです。国境を越えて世界で活躍したいなら、日本のスタンダードが海外のスタンダードだと思わず、外国人の人たちがお金に関してどういう考え方を持っているのかを学び準備をしましょう。

開志専門職大学

大学生のうちに事前準備しておくのですね。

早川宗徳

世界にはみなさんが活躍できるフィールドがたくさんあります。そのフィールドを選べる自分になるための準備です。日本人は優秀なので、世界にはたくさんフィールドがある、自分たちにはたくさんチャンスがあることを前提に、自分の枠を小さいままにせず、学生時代からぜひ準備に取り掛かってください。

日本では「沈黙が金」でも、海外では胸を張って「自分の意見はこれだ」と言おう。

開志専門職大学

大学の学生に期待することは?

早川宗徳

自分の考えをしっかり持つことが大事です。世界の人たちと比べると、日本人は「みんなと同じです」という意見が非常に多い。みんなと同じではなく、胸を張って「自分の意見はこれだ」と言えることが大事です。

開志専門職大学

確かに、周りと同じがいいという日本人が多いかもしれません。

早川宗徳

日本では「沈黙が金」だと言われ、言わなくても分かるだろうとか、そこまで言わなくても伝わってるんじゃないかという感覚がありますよね。でも、私の場合、アメリカ人やヨーロッパ人とコミュニケーションをして、思っていることをちゃんと言わなければ、全然伝わっていないことが非常に多かった。そういう意味では損をすることが多いのです。

開志専門職大学

海外で成功している日本人は、はっきり意見を言う人ですか?

早川宗徳

例えばサッカーの本田圭佑選手とか、野球のイチロー選手とかは、自分の意見をチームメイトだったりマネジメントチームにしっかりと表現して伝えることができた人たちです。だからこそ、海外でも活躍できたと思います。個の意見をはっきり表現できないと、どれだけいい考えを持っていても相手に伝わりません。

開志専門職大学

特別講師として、どのようなことを教えていただけますか?

早川宗徳

三つのことを教えたいと思います。一つ目は、これからの時代と働き方です。国境を越えて、働く会社や場所が自由に選べる時代になってきた今、日本より進んでいる海外での働き方についてお話します。二つ目は、日本人が世界で活躍するために必要なこと。どんなことをして、どこに注意しながら海外に住めば、日本人が世界で活躍できるのかをお話します。最後は、学生時代にやっておくべきこと。53年間の私の人生を振り返って、若い時にもっとこうしておけば良かったなという反省点も含めながらお話します。

開志専門職大学

今後の目標は何ですか?

早川宗徳

今やっていることの延長ですが、全米やヨーロッパにできるだけ多くの日本のおいしい飲食ブランドを展開していくことです。日本には素晴らしい食文化がたくさんあるのに、まだまだ海外には出ていないものもあります。そういうものを拡大、店舗展開することが私の夢です。

開志専門職大学

国境を越えて海外に飛び出してみたい学生にとっては聞き逃せない講義になりそうですね。本日はどうもありがとうございました。

ダイニングイノベーション ノースアメリカ & ヨーロッパ President/CEO
早川宗徳 氏

大阪府出身。高校卒業後、 専門学校を経て旅行会社に就職。1990 年 20 歳の時にハワイ に渡り、日本食レストランで働き始める。その後、自身の旅行会社や貿易会社の起業を経て、2001 年 焼肉レストランチェーン「牛角」を運営するレインズインターナショナルの北米レインズの代表取締役社長に就任。2018 年までに北米に牛角を 42 店舗展開して、同社社長 を退任し、 現職のダイニングイノベーションNorth America & Europe President/CEOに就任。

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