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寿命が尽きるまで、大好きな旅をコーディネート。生まれ変わっても添乗員・ガイドとしてお客様に旅行の素晴らしさを伝えたい 岩澤秀治氏

100年以上の歴史をもつJTBは、日本最大級の旅行会社として世界中に事業展開しています。その中の一つ、JTB USA, Inc.の本社であるロサンゼルスで添乗員・ガイドとして長年、旅のプロフェッショナルとして活躍してきたのが岩澤秀治さん。2020年からは、JTB USA Inc.専任の添乗員・ガイドとして活躍しています。そんな岩澤さんにグローバルな旅とハートフルな人間関係を構築できる添乗員・ガイドの仕事の魅力について語っていただきました。
添乗・ガイドの仕事の評価は、添乗回数やリピーター率などの数字でも表せますが、本当の実績は、旅行終了後のお客様からの心温まる「ありがとう」の一言がすべてです。

開志専門職大学

岩澤さんのお仕事について教えてください。

岩澤秀治

私はロサンゼルスをベースに添乗員・ガイドとして、主にアメリカ在住の日系人およびアメリカ人の方々を世界各地の観光旅行にご案内しております。

開志専門職大学

添乗員とガイドは違うのですか?

岩澤秀治

添乗員もガイドも同じように思われるかもしれませんが、旅行業法上、あるいは業務上、全く違った仕事なのですよ。 

開志専門職大学

それは知りませんでした。どのように違うのですか?

岩澤秀治

添乗員は、「お客様の安全とツアー旅程の管理をする旅行の演出家」で、ガイドは、「お客様を観光地にご案内して見どころなどを説明するプレゼンター」です。

開志専門職大学

岩澤さんは、両方なのですか?

岩澤秀治

それぞれの国により多少の違いはありますが、添乗員とガイドはそれぞれ別々の国家試験があり、別々の資格が必要です。私はアメリカで、一人で二つの仕事をこなしています。ただし、海外ではその国の決まりにより、私は添乗業務員はできても、ガイド業務はできないこともあります。

開志専門職大学

どんな国でガイドの仕事はできないのですか?

岩澤秀治

イタリアやスペイン、ポーランド等です。私は添乗員として皆様をお連れし、皆様の面倒を見る事はできますが、ガイドとしてその土地の観光案内をする事は禁止されています。その国の人でなければガイドができないことになっていて、例えばイタリアなら、国家ライセンスを持ったイタリア人ガイドを雇って観光案内をする必要があります。

開志専門職大学

仕事での実績についてお聞かせください。

岩澤秀治

添乗・ガイドの仕事は、実績を数字で表す事は大変難しいです。仕事の評価は仕事が終わった時にどれだけお客様が満足して下さったかによります。ツアーが終了した別れ際に、「ありがとう」と皆さんが握手を求めてくださったり、ハグをして下さったりします。その後、笑顔で別れる瞬間にお客様の満足度を肌で感じますね。

開志専門職大学

なるほど。数字ではなく、お客様からの心のこもった言葉や態度で得られるものなのですね。

岩澤秀治

もし数字で実績を表すなら、リピーターとして何度も参加して下さるかどうかですね。

開志専門職大学

添乗員さんやガイドさん目当てでリピートする方がいらっしゃるなんて驚きです。

岩澤秀治

リピーターとしてどれだけ多くの方が参加してくださったかということも実績を表す一つのバロメーターでしょう。また、自分が企画したツアーが満席になった時には、手ごたえを感じますね。

開志専門職大学

岩澤さんなら、添乗の回数も多いのでしょうね。

岩澤秀治

私はこの仕事を48年間続けています。もし年間10回の添乗をしたとしたら、単純計算で添乗回数は480回となりますね。もし月に1回ずつ、年12回の添乗なら、48年間で576回。多い時は1年間に20回以上添乗することもありましたから、ちょっとはっきり数えられない(笑)。

開志専門職大学

1ヵ月に1回は必ず、添乗の仕事で旅に出られているということですね。

岩澤秀治

ただし、途中で海外駐在員という期間も多くありましたので、実際には渡航歴・添乗歴は400〜500回位でしょうか。

開志専門職大学

お仕事とは言え、世界中をご旅行された岩澤さんがうらやましいです。

岩澤秀治

自分でもこの仕事が好きでたまらないですし、いろんな所に旅行ができて本当に幸せです。

最初から簡単にJTBに入れたわけではありません。実力が認められて、あこがれの JTBで働くことができる前に、多くの経験を積み、各種ライセンスを取得しました。

開志専門職大学

では、岩澤さんが所属されているJTBについて教えてください。

岩澤秀治

JTBは、1912年に外国人誘致を目的に日本で最初に出来た旅行会社です。社歴も100年を超える伝統のある会社で、現在でも日本で一番大きな旅行会社として知られています。

開志専門職大学

日本人なら、ほとんどの人が知っている大企業ですね。

岩澤秀治

世界中に支店を置き、旅行のみならず、各種関連事業も進めております。関連事業は世界中に数えきれないほどあるのですよ。

開志専門職大学

私たちがよくお世話になっている事業もありますか?

岩澤秀治

皆さんご存じの列車の時刻表や『るるぶ』 などの旅行雑誌、ガイドブックを発行する出版会社があります。その他、バス会社も所有。日本の支店、代理店だけでも700店舗ぐらいあります。

開志専門職大学

海外でもよく見かけますよね。

岩澤秀治

海外に38ヵ国、93都市に226拠点もあります。他にデスクやラウンジも19店舗あります。

開志専門職大学

JTBは日本を代表する世界規模のグローバルカンパニーですね。

岩澤秀治

100年以上の歴史のあるJTBを一言でご案内するのはちょっと難しいですが、働いていて常に感じますが、非常にいい会社ですよ。JTBが旅行業界でトップであることは間違いありません。若い時から憧れていた会社で働いてこられたことに 誇りを感じています。

開志専門職大学

岩澤さんが就職先をJTBに決めた理由は何ですか?

岩澤秀治

JTBのような大手旅行会社で自分のスキルを磨き、実力を発揮してみたかった。でも若い頃の自分には、とうてい入れない雲の上のような存在の会社でした。

開志専門職大学

どんな経緯で最終的にJTBに入社されたのですか?

岩澤秀治

最初は日本で別の旅行会社に勤務しました。その後、外資系航空会社に転職しましたが、40才になる直前、小さい頃からの夢を実現するために渡米。最初はフリーランスの添乗員・ガイドをしていました。JTBに入社できたのは、このフリーランスのガイドとして働いていた時代に巡り合った上司が、私の仕事と実績を認めてくれたからです。

最初、添乗員になろうと思った理由はただ一つ!世界中をタダで見て回れるから(笑)。でも、生まれ変わっても就きたいと思えるほど素晴らしい職業です。

開志専門職大学

そもそもなぜ添乗員やツアーガイドになろうと思ったのですか?

岩澤秀治

答はただ一つ。世界中をタダで見て回れるからです(笑)。皆さんはお金を払って海外旅行。私はお金をいただいて海外旅行です。

開志専門職大学

それはいいですね。小さい時から旅行が好きだったのですか?

岩澤秀治

世界中を旅するのは小さい時からの夢で、もともと旅行が好きでした。小学生時代は、父親に連れられて、山歩きやハイキングに山登り。中学生時代は、ヒッチハイクや自転車で北海道をぐるりと一周。 体の大きくなった高校生時代は、バイクで一人、北海道から本州を回りました。運転免許をとってからは、本州、九州へと行き先を伸ばしました。

開志専門職大学

若いころから、いろいろな所に旅されたんですね。

マイナス50度のアラスカで露天風呂に入りながらオーロラを見たり、アマゾンで釣ったピラニアを唐揚げにして、みんなで一杯飲んだり、「自分の行きたい・やりたい」を旅にしました。

開志専門職大学

添乗員の仕事は岩澤さんにとって天職ですね。ところで、手がけたお仕事の中で特に印象深い旅行を教えてください。

岩澤秀治

渡米後のツアーは、ほとんどが自分で行きたいところを「自分でプラン」して「自分でプロモーション」をし、「自分で添乗・ガイド」をしましたので、全てが本当に楽しかったですね。

開志専門職大学

例えばどんなツアープランでしたか?

岩澤秀治

冬のアラスカを想像してみてください。マイナス50度の極寒地アラスカで、露天風呂にはいりながらオーロラを見ようじゃないかというツアーを企画しました。 そんなことできるの?なんて言われましたが、それができるんです。参加された皆さんは、本当に楽しまれましたよ。

開志専門職大学

寒さと熱さが入り混じる刺激的なツアーですね。

岩澤秀治

他にも、 南米のアルゼンチン、地球の最南端の町のウシュアイアを訪れました。そこに何かがあるわけでもないのですが、その地に立ってただ「地球最南端だ〜」と満足する旅。自己満足の旅ですね(笑)。

開志専門職大学

自己満足でも、地図だけでしか見たことのない地球最南端の町に行ってみたい気持ちは分かります。

岩澤秀治

その最南端からさらに南に1000キロ先、東京から直線距離で鹿児島ぐらいの距離ですが、そこにはなんと南極大陸があるんですよ。

開志専門職大学

スケールが大きい!

岩澤秀治

他には、南米のアマゾンでピラニアを釣って、唐揚げにしてみんなで食べながら一杯飲む旅や、アフリカのキリマンジャロの麓でサファリを楽しむ旅、ピラミッドの内部に入るツアーなども。

開志専門職大学

大自然の迫力にめまいがしそうです。

岩澤秀治

世界三大滝のビクトリアの滝を楽しむ旅や、3泊4日かけて広大なオーストラリア大陸を超豪華寝台列車で横断する旅なども素晴らしかった。

開志専門職大学

ヨーロッパのオリエント急行をイメージしてしまいました。

岩澤秀治

豪華な列車の旅です。列車内でも夕食の時はダークスーツを着用して、ピアノ伴奏に合わせてダンスをするような豪華な旅でした。 他にも、インドのダージリンから世界第3位の標高を誇るカンチェンジュンガを背景に朝日を見る旅。それはもう美しくて感動しました。

開志専門職大学

仕事で世界の名所を旅行できるなんて、うらやましいの一言です。

岩澤秀治

私にとって最後のツアーは南極のつもりです。今はコロナで行けないですが、早く行きたいです。だって早くしないと私の寿命が尽きてしまいますから(笑)。

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大学時代はどんな風に過ごされましたか?

岩澤秀治

高校卒業後、観光業を学ぶ旅行専門学校に入学。卒業後に旅行会社に就職をしました。

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大学には行かなかったのですか?

岩澤秀治

就職してしばらくしてから、大学に入学しました。大学はキリスト教の大学で、仏教系の高校時代のお経から、今度は蔦の絡まるチャペルで一生懸命に聖書を読み祈りを捧げていました(笑)。

開志専門職大学

両立は大変だったでしょう?

岩澤秀治

学生時代の4年間は、社会人と学生の二足の草鞋を履いていたことになります。今思うと、その4年間が人生で最も充実していた時期の一つでしたね。結婚して子どもも2人いましたし。

開志専門職大学

なんて密度の濃い大学時代なんでしょう!

岩澤秀治

勉学と仕事に夢中でした。英米文学科卒業ですが、この時に学んだキリスト教は後の添乗の仕事に役立ちました。ヨーロッパの歴史はキリスト教がベースですし、アメリカの建国の歴史はヨーロッパからプロテスタントが新天地を求めてアメリカ大陸へ逃げてきたわけです。世界中を旅行するにあたってキリスト教の話題は外せないものでしたので、非常に役立ちました。

大学時代は、幅広く自分の周りを観察して、興味のあることには何でも首をつっこみ、たくさんの友人を作る。学生時代の友人は一生を左右するほどに大切です。

開志専門職大学

大学時代の学びが仕事で役に立ったのですね。大学時代にやっておいた方がいいことをアドバイスしていただけますか?

岩澤秀治

大学時代は自分の人生を構築する上でものすごく重要な時期。自分の人生を見つけるために、興味のある事は何にでも首を突っ込むべしです。

開志専門職大学

興味のあることが分からないときは?

岩澤秀治

興味がなくても首をつっこめば、それがもしかしたら自分の興味のあるものになるかもしれません。それが将来自分にあった仕事を決める手がかりになるはずです。幅広く自分の周りを観察してください。

開志専門職大学

他にもありますか?

岩澤秀治

2つ目は、友達をたくさん作るべし。学生時代の友人は一生を左右します。友達が多ければ、就職してからも同窓をコネに色々な人とのつながりができるでしょう。コロナが落ち着いたら、キャンパスに行ってたくさん友だちを作ってください。

開志専門職大学

最後となりますが、高校生に伝えたいことはありますか?

岩澤秀治

「目標を作りなさい」 「夢を持ちなさい」と言うことです。まず最初に、自分が努力をしたら到達できる目標を作りましょう。そして次は、夢を持ちましょう。これは到達できるかどうかは分からなくてもかまいません。夢ですからいくら大きくてもいいのです。実現できるできないに関係なく、夢を持つことが大事なのです。「一念岩をも通す」と言います。どんなことでも一途に思いを込めてやれば成就します。こうなりたいと強く思えば必ず夢は実現します。

開志専門職大学

岩澤さんの楽しくユーモアにあふれた講義を聞かせていただける日が待ち遠しいです。本日はありがとうございました。

特別講師 岩澤秀治氏

(元)JTB USA Inc.エグゼクティブ・トラベル・コーディネーター
北海道出身。青山学院大学文学部英米文科卒。日本の国家資格である総合旅行業務取扱管理者資格およびIATA / UFTAAのInternational Travel Consultant上級資格を保持。日本の旅行社、外資系航空会社勤務を経て1993年渡米。フリーランスのツアーガイドとして活躍後に近畿日本ツーリストの米国法人に入社。その後、2012年、JTB USA, Inc.に転職。2020年からはJTB USA Inc.専任の添乗員・ガイド、フリーランス ガイドとして活躍中。

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