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制作に携わったスパイダーマン:スパイダーバースはアカデミー賞受賞作! 島田竜幸氏

子どもの頃から『スター・ウォーズ』に憧れ、ハリウッドのCGアーティストに。アカデミー賞を受賞したアニメーション作品『スパイダーマン:スパイダーバース』をはじめ、ハリウッドの超大作映画の製作に数多く携ってきた島田竜幸さん。大学と専門学校のダブルスクール、日本の会社から台湾への転職を経てカナダ・バンクーバーで活躍する島田さんに、現在のお仕事、そして今後の目標などを伺いました。
日本から台湾、そしてカナダへ。CGアーティストとしてステップアップ!

開志専門職大学

これまでの経歴について、簡単に教えてください。

島田竜幸

僕の仕事は、VFX(ビジュアルエフェクト/視覚効果)のCGアニメーターです。CGのキャラクターを動かす、また実写の映画だと、スタントマンができないような動きをCGで表現する、そんな仕事をしています。

島田竜幸

大学と専門学校のダブルスクールをしていたのですが、卒業して最初に入社したのは、日本のポリゴン・ピクチュアズという会社でした。

開志専門職大学

その会社を選んだのはどんな理由だったのでしょうか?

島田竜幸

ハリウッド映画に憧れてCG業界に入りましたが、ポリゴン・ピクチュアズは海外の作品を多く手掛けている会社だったので、この会社を選びました。

島田竜幸

小さい頃からずっと、スター・ウォーズが好だったのですが、ちょうど新人の頃にこの会社が『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』というアニメーションシリーズの製作を請け負うことが決まったのです。

島田竜幸

新人だったこともあって、先輩や上司には「まだ実力が足りないだろう」と言われたのですが、どうしてもクローン・ウォーズのチームに入りたくて頼み込んで、最後は「情熱は認めてやる」ということで参加させてもらえることになりました。

開志専門職大学

熱意が伝わったのですね!

島田竜幸

はい。すごくうれしかったし楽しかったです! ただ、ポリゴン・ピクチュアズがこの『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』を請け負ったのは、結果的には1シーズンのみだったのです。この作品に関わり続けたいと思った僕は、約3年間お世話になったこの日本の会社を出て、同作品をずっとメインで担当している台湾のCGCG Inc.という会社への転職を決めました。

開志専門職大学

ここでも、スター・ウォーズへの熱意で行動したというわけですね?海外への転職ということについてはどう感じていましたか?

島田竜幸

スター・ウォーズに関わりたかったですから、どこかのタイミングで海外には出たいという気持ちはありました。

島田竜幸

とはいえ、正直、海外へ行く準備をしていたというわけではなくて、どうやって海外で働くのかもよく分かっていませんでした。クローン・ウォーズやりたい!それだけで海外へ行く事を決めました。飛行機が台湾に着陸するまで、台湾が中国語圏の国だと知らずにいたので、まず着陸してカルチャーショックを受けました(笑)。

開志専門職大学

実際に台湾に行ってみて、CGCGでの仕事はどうでしたか?

島田竜幸

4年間、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』と、『ヒックとドラゴン』のアニメーションシリーズを担当しました。アジアにあるものの、欧米のスタジオとの仕事が多いということもあり、とても欧米的な会社でしたね。プライベートでは現地のラグビーチームに参加して週末はラグビー漬け! とても、充実していました。

島田竜幸

台湾はあまり大きい国ではないので、大きな産業も持っていません。ですから、CGCGの同僚はみんな、アンテナを外に向けて張っていて、周りからいい刺激をたくさんもらいました。

島田竜幸

今になってみれば、無知だったこと、あまり考え過ぎずに海外へ飛び出したことは、結果的によかったなと思っています(笑)。良き同僚・友人に囲まれ、楽しくあっという間の4年間でした。

開志専門職大学

そうなのですね! その後、カナダの会社に移られたのですよね?

島田竜幸

はい、台湾で働きながら、ハリウッドの映画製作会社に履歴書と、自分の作品をまとめたデモリールを送り続けていたんです。カナダにある会社、イギリスにある会社から同時に連絡が来ました。話が早く進んだカナダのMPCという会社から採用の連絡が来て、カナダ行きが決まりました。

アカデミー賞受賞作『スパイダーマン:スパイダーバース』をはじめ、超人気作品に多数携わる

開志専門職大学

カナダに移住されてから今までに、どんな作品に関わってこられたのですか?

島田竜幸

MPCでは、DCシリーズの『ジャスティス・リーグ』を製作しました。

島田竜幸

MPCには1年弱所属しました。その時に現在所属するソニー・ピクチャーズ・イメージワークスが『スパイダーマン:スパイダーバース』を製作するという話を聞いて、ぜひ自分も参加したいと応募しました。

開志専門職大学

『スパイダーマン:スパイダーバース』は後にアカデミー賞を取ったアニメーションですよね。クリエイターの方たちの間でも注目されていたのですか?

島田竜幸

そうですね。実際に希望する人は多かったと思います。「今までにないCGアニメーションの映画を作るらしい」ということで、製作前から業界内では話題になっていました。

開志専門職大学

一つの映画の中で、どのような仕事を担当するのですか?

島田竜幸

ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスは大きな会社なので、全部で何百人というアーティストがいます。自分に割り振られたシーンに動きを付けていくのですが、時間のかかるものだと、2秒ぐらいのショットを2・3カ月かけて作り込んでいきます。

島田竜幸

こう言うと、1コマ1コマすごく時間をかけて作っていると想像されるのですが、実際には、いろいろなバージョンを作って、前後のショットと合わせてより良いものを作り上げていく、という作業をしていて、かなり速いテンポでショットを作っているんです。

開志専門職大学

すごい時間をかけて一つのシーンを作っていくのですね。

開志専門職大学

仕事をしていて楽しい時はどんな時ですか?

島田竜幸

作品全てが完成して、自分の担当したショットが映画館の大画面に映し出されるのを観る時、そしてエンドロールに自分の名前を見た時が、なんといっても至福の時ですね(笑)。報われた、と感じます。

開志専門職大学

『スパイダーマン:スパイダーバース』の後には、どんな作品に関わってこられたのでしょう?

島田竜幸

実写の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』という映画の製作にも参加しました。この映画で一番大きな仕事だったのが、スパイダーマンがロンドンブリッジから大ジャンプでカメラに向かって飛んできて、またジャンプして飛んでいく大きなショットです。今、弊社のウェブサイトのトップにも出ているシーンで、これを担当できたのは大きな経験でした。

開志専門職大学

アニメーションと実写、両タイプの作品に関わってこられたのですね。

島田竜幸

はい、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスは、実写作品・アニメーション作品の両方を手掛けているのが大きな特徴です。クリエイターは、僕のように両方やる人もいれば、どちらかという人もいます。アニメーション作品が得意な人のほうが多いですが、僕は実写系の作品の方が好きですし得意です。

島田竜幸

この『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が終わった後、一度ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスを離れました。

島田竜幸

この業界の仕事はプロジェクトベースと言って、作品ごとに契約をするのが一般的で、直近では『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年10月1日アメリカ公開・同12月3日日本公開)という実写の作品に関わっていました。

島田竜幸

このヴェノムシリーズはアメコミが原作の作品ですが、おどろおどろしいキャラクター性、凶暴性を意識した描写・体の動きなど、今までにやったことのないような表現がたくさんあって、非常に面白かったです。

開志専門職大学

CGアーティストの方たちは、作品ごとに会社を移ることも珍しくないのですね?

島田竜幸

はい、僕が『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を終えて、またこうしてソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに戻ってスパイダーマンの最新作『スパイダーマン・ノー・ウェイ・ホーム』(2021年12月17日全米公開)の仕事をしているように、もといた会社に戻って以前の同僚と働く、ある会社で一緒に働いていた人と他の会社でまた一緒になる、といったことも結構あります。

島田竜幸

この業界での就職・転職活動では、自分が今まで製作してきた映像を1?2分間にまとめたもの(デモリール)を提出します。ここ数年でいろいろな作品に関わり、重要なショットを任せてもらう実績ができてきたことで、いろいろなスタジオから声をかけてもらえるようになってきました。

開志専門職大学

スタジオから直接声がかかることもあるのですね。

島田竜幸

はい、LinkedinのようなビジネスSNS上で他のスタジオの人とつながって、「今の契約はどういう状況?」「何月からこんな映画の仕事があるけど来られますか?」といった話をします。

開志専門職大学

島田さんのようなVFXアーティストの方たちは、国境を越えて仕事をする人が多いのですか? それとも、島田さんは特別アクティブだと思いますか?

島田竜幸

アクティブなほうだとは思います(笑)。ただ、今一緒に働いている同僚などを見ても、いろいろな経験を経て、ここにいる人が多いです。国をまたぐ、ということをそれほど気にしない人は多いです。

本当にやりたいことを見つけ、大学在学中に専門学校にも入学。やりたいことへの熱意で目標に近付いていく

開志専門職大学

ダブルスクールをされていたということですが、大学、専門学校、それぞれの学びにはどんな違いがありましたか?

島田竜幸

大学を選ぶ時は、それほどやりたいことがあったわけではなくて、漠然と大学進学を目指していました。センター試験の時期ぐらいに、電車でCGの専門学校の広告を見て、「これだ!」と思って。そのままその専門学校に直接話を聞きに行ったんです。

島田竜幸

両親に、大学ではなく専門学校に行きたいと話したのですが、「とりあえず大学は出ておけ」と。それでこの時は大学に進むことを選択して、CGを学べる大学ということで、東京電機大学に進学しました。

島田竜幸

大学は、CGを学ぶために新設された学科で、機材などはそろっていましたし、一通りのソフトの使い方などは学べたものの、先輩もいなければ先生もあまりいなかったので、専門的なことは教えてもらえなかったです。その代わり、大学では体育会ラグビー部に入り、4年時には副主将として、ラグビーに没頭していました。裁縫が好きだったので、ユニクロで3年間アルバイトをしたことも楽しい経験でした。

開志専門職大学

CGを学ぶために再度、専門学校に通うことを考えたのですね?

島田竜幸

はい。大学ではCGは独学だったので、より詳しく学ぶには大学は辞めて専門学校に行こうと思い。しかしこの時も両親から「卒業はしておきなさい」と。それでダブルスクールを選択しました。

開志専門職大学

念願の専門学校はどうでしたか?

島田竜幸

大学で習えなかった専門的な部分を学べたと感じます。専門学校に通ったのは、大学4年生と重なる1年間だけでしたが、本当に自分が学びたいと思って選んで通ったということもあって、非常に集中して勉強できました。一緒に学べる仲間がいたことも大きかったです。

開志専門職大学

長く海外で活動されていますが、日本への思いは?

島田竜幸

僕自身は、ハリウッド映画に関わりたいという気持ちが一番で、海外に住みたいというのが第一の目的ではありませんでした。家族もみんな日本にいるので、やっぱり日本はいいなという気持ちはずっとあります。

島田竜幸

特に、昨年来のコロナウイルスの影響で、しばらく日本に帰れていないので、タイミングを見つけて日本には行きたいとは思っています。

開志専門職大学

日本からハリウッドの仕事をするような可能性はありますか?

島田竜幸

昨年からは家で仕事をしていますし、作業自体はどこでもできるとは思うのですが、やはりチームで仕事をしている以上、ミーティングなども多く、時差の大きい日本で働くのは、現状では難しいかなと感じています。

島田竜幸

これからまた少しずつ変わっていくかもしれないですし、日本にいながらハリウッドの仕事ができれば、という気持ちもあります。

島田竜幸

仕事としては、今後もハリウッド映画に関わっていきたいという気持ちが何より強いので、まずはそれが最優先ですね。

スター・ウォーズの本丸まであと少し? 好きなことを見つけて、まずはチャレンジしてほしい。

開志専門職大学

今後の目標はどんなところに置いていますか?

島田竜幸

ずっとスター・ウォーズを追いかけてきて、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』というスピンオフには参加できたものの、まだ『スター・ウォーズ』の映画本編の製作にはたどり着けていません。

島田竜幸

キャリアを重ねて関わりたいと思う大好きな作品に関われるようになってきましたし、いろいろなスタジオからのオファーも増えてきたので、CGアーティストとしての自信も付いてきました。これからも腕を磨いて、好きな作品にもっと深く関わっていけるようになりたいです!

開志専門職大学

念願だったスター・ウォーズももう少しですね。楽しみにしています!

開志専門職大学

高校生に向けたメッセージ、学生のときにやっておいたほうがいいと伝えたいことはありますか?

島田竜幸

僕は、学生の頃からラグビーが好きで、ずっとプレーしていました。また、大学でもラグビーに没頭しつつアルバイトをしたりしながら、今のCGアニメーターという仕事までたどり着きました。

島田竜幸

自分がやりたいと思うことを見つけるためには時間もかけて、いろいろな経験を経て、見つけることができました。

島田竜幸

すぐに「何がやりたい」と見つける必要はないと思うので、興味があることに対してとことん突き進んでみる、それが何かにつながるかもしれません。

島田竜幸

無駄なことは何もないと思いますから、まずはやってみるということをお勧めしたいです。

開志専門職大学

まずはチャレンジしてみる、ということですね。

開志専門職大学

最後に、特別講義では、どんなことをお話ししていただけるでしょうか。

島田竜幸

僕がやっている、VFXアーティストの仕事、例えばCGのキャラクターがどうやったら動くのか、リアルな動きに見えるのかを簡単にお見せする予定です。

島田竜幸

また、僕がこのハリウッドのCGアーティストの仕事に行き着くまでに、どんな選択、経験をしてきたか、どうやってこのキャリアに至ったのかについて、お話ししたいと思っています。

開志専門職大学

楽しみにしています。ありがとうございました!

ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス
CGアニメーター
島田竜幸氏

1984年埼玉県生まれ。東京電機大学とWAOクリエイティブカレッジをダブルスクールで卒業。日本国内のスタジオを経て台湾のCGCG Inc.に転職。2017年1月、カナダのMPCへ、さらに同年11月にソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに入社し、長編アニメーション部門でアカデミー賞を受賞した『Spider-man:into Spider Verse』や、実写映画『Venom: Let There Be Carnage』、2021年冬公開予定の『Spider-man No Way Home』などの作品で、CGアニメーターとして活躍。趣味はラグビー。現在はカナダのバンクーバー在住。

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