

開志専門職大学
安田さんの現在のお仕事について教えてください。
安田江利果
バンダイで、「たまごっち」の企画開発をしています。どんな遊びができる「たまごっち」にするかというコンセプトから、デザイン、パッケージ、CMに至るまで「たまごっち」の全てを総合プロデュースする仕事です。

安田江利果
「たまごっち」と一口に言ってもさまざまな商品があるのですが、私が担当しているのは「たまごっちスマート」というカラー液晶が付いたウェアラブル型のものです。たまごっちスマートの企画開発に関わる社内のメンバーは総勢10名ほどで、私はメンバーに適切な仕事を割り振って仕事を進めていくプロデューサー的立場のユニットリーダーを務めています。


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企画やコンセプトを出すのは安田さんだけがするのですか?
安田江利果
企画やコンセプトは、バンダイのチームメンバーで会議をします。私の仕事はそのアイデアをまとめること。みんなで企画は考えますが、いつでも、私が担当である、という気持ちは忘れないようにしています。そうしないと企画がぶれてしまうので。


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面白そうな内容ですね。お仕事の醍醐味はなんですか?
安田江利果
街を歩いていて子どもが「たまごっち」を持っているのを見かけたり、SNSで「たまごっちスマート欲しい!」と話題になっていたりするのを見るのは楽しいですね。

安田江利果
また、今年で25周年を迎える歴史ある商品なので、おばあちゃんやお母さん世代から、小さい子どもたちまでその名前を知っています。「新しいたまごっちが出るんだね」と自分の母親から言われると、「たまごっち」は世代を超えて共有できる話題なんだなと感慨深くなります。


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みんな「たまごっち」のことは知っていますもんね。特に手応えのあった仕事はなんですか?
安田江利果
私が今担当している「たまごっちスマート」は、2021年6月に発売告知をスタートしたのですが、その当日、「たまごっち」のワードでTwitterトレンド1位になったんです。

安田江利果
2年前に企画をスタートし、力を入れて製作した商品に対して、否定的な意見よりも、「やってみたい」「面白い」と思ってくれる人がたくさんいました。それからSNSで話題になり、その流れが大きくなってトレンド1位になったのはとても手応えがありましたね。


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トレンド1位! すごいです。話題になった「たまごっちスマート」には新しい試みがたくさん盛り込まれているそうですね。例えば、「キャラクターが懐いてくれる」という機能。この機能はどうして搭載したのですか?
安田江利果
1996年に発売された「たまごっち」はもともと「デジタルペット」をコンセプトにして誕生しました。私自身も昔、実家で犬を飼っていて本当に大好きな相棒だったので、そんなペットが身近にいたらどうなるのか、という部分を深堀りして考えたことがきっかけです。

安田江利果
従来の「たまごっち」は、画面の中にいる存在で、ごはんをあげると喜びはするけれど感謝はしてくれなかったんです。でも、普通に考えるとペットって、ごはんをくれる人には懐くし、全く世話をしないと帰宅しても寄ってきてもくれませんよね。そんなリアルなペットの表現を増やすことに重きを置きました。

安田江利果
また、コロナ禍という時代背景もあります。コロナ禍中、ペットロボットが話題になりました。ペットロボットは高機能で、ペットのように懐くし、搭載しているカメラで人を認識して、よく寄ってくる人を覚える機能がついているものもあります。そういったペットロボットを求める方の気持ちに寄り添い、「たまごっち」にも同じ機能があればいいのにと考えて、懐いてくれる機能を盛り込みました。


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「たまごっちスマート」は今までにないウェアラブル型ですが、どうしてこの形にしたのですか?
安田江利果
スマートウォッチなど身に着けるガジェットが当たり前になったこの時代に合わせて、「たまごっち」もウェアラブル型で身に着けられるようにしました。実は、「たまごっち」はこれまでも時代に合わせて進化していて、携帯電話が普及した頃は携帯電話と通信できるように赤外線通信機能を、スマホが普及した頃にはアプリと通信できるようにBluetoothを搭載するなどしていました。


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時代を反映するおもちゃなんですね。安田さんは社内外で期待されている商品を任されていますが、仕事で大変なことはありますか?
安田江利果
「たまごっち」は歴史のある、会社としても大切なコンテンツなので、多くの方からさまざまな意見をもらいます。お客様に喜んでいただける「たまごっち」を作るため、チームと自分の考えやこだわりを持ちながら、いただく意見をまとめて企画していくことに、この1年間すごく苦労しました。

安田江利果
例えば、「たまごっち」は「デジタルペット」なので、オンオフのボタンや一時停止ボタンがありません。現実のペットに一時停止はありませんから。この部分は担当者として守っていきたいコンセプトでした。でも、企画段階で「死んだたまごっちを生き返らせられたらよくない?」みたいなことも言われるんです(笑)。そういう時に「実際のペットに生き返る子はいないですよね?」と、大事にしたい部分を守り通せるように、芯を強く持っておかないといけないという難しさがありましたね。


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今回の「たまごっちスマート」では、キャラクターが死んでしまったらそれで終わりなのでしょうか?
安田江利果
新しいキャラクターを迎えることはできます。ですが、初代の開発者はゲーム内で「たまごっち」が一度死んだら、二度と遊べないようにしたかったみたいです。本物のペットを追求していたんですね。


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「たまごっち」が死ぬことで遊べなくなるのは悲しいですが、後からもう一度買う人もいて収益化できそうですね(笑)。ちなみに、どうやって収益化するかなども安田さんたちが考えるのですか?
安田江利果
そうですね。会社としても売り上げを作ることができ、お客様にも長く遊んでいただけるラインナップを考えることも私たちの仕事です。今回の「たまごっちスマート」には、10種類のキャラクターが内蔵されています。それ以外のキャラクターで遊びたい時は、別売りのカードを購入して、それを「たまごっち」に差し込むとキャラクターが追加される仕組みになっています。

安田江利果
課金とはちょっと違いますが、別売りのカードを購入すれば、新しいキャラクターで遊べる仕掛けを作ることで、お客様に継続的に遊んでいただけるよう工夫をしています。


開志専門職大学
話は変わりますが、安田さんはどんな子どもでしたか?
安田江利果
私は大阪出身で、子どもの頃から典型的な目立ちたがり屋でした。小学校の時も、学芸会や催し物、運動会などでは絶対にクラスの前に出て仕切っていたし、合唱の曲を歌わない男子に怒るタイプの子どもでした(笑)。

安田江利果
お祭り好きというか、その時からみんなと何かをするのが好きでしたね。「たまごっち」の企画開発の仕事でも、20人出席するような大きな会議を週に何度も行うことがあります。その人たちの中で「みんなで同じ方向を向いてやろうよ!」と、盛り上げるのは私の役目です。仕切りたがりのお祭り好きの性格が生きていると感じます。


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小さい頃は何になりたかったですか?
安田江利果
小さい頃は、『ハリー・ポッター』を読んだ時は小説家に憧れましたし、『ミルモでポン!』を読んだ時は漫画家になりたがっていましたし、学校に大好きな先生がいた時は学校の先生になりたがるなど、ミーハーで、熱しやすく冷めやすい子でした。

安田江利果
結果的に縁あってバンダイに入社しましたが、バンダイではジョブローテーションが推奨されていて大体4?5年で別の部署に異動したり、職種ごとガラッと変わることがあります。「社内転職」と呼ばれているほど、社内でさまざまなキャリアを経験することができるのです。

安田江利果
今、私は「たまごっち」の企画開発に5年間携わっていますが、数年後にはアパレルの営業をしている可能性もあるし、ガシャポンの企画をしている場合もあるので、飽き性な自分の性格には合っていると感じています。


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そうなんですね。高校時代はどんな高校生でしたか?
安田江利果
高校は大阪の公立高校に通いました。その高校は文武両道を第一に掲げていたので、部活も一生懸命にして、それなりに勉強も頑張っていました。

安田江利果
しかし、相変わらず、高校生になっても体育祭では副団長をやるし、演劇では主役をやるし、目立ちたがり屋のお祭り好きのままでした(笑)。


開志専門職大学
就活を経て、バンダイに就職を決めた理由はなんだったんですか?
安田江利果
一番楽しそうだった、という理由でバンダイに決めました。社員の方には面白い人が多くて、話すのが楽しかったので、自然とこの会社に行きたいという気持ちが芽生えていたと思います。


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なるほど。今のお仕事に話を戻しますが、仕事面で達成したい今後の目標はありますか?
安田江利果
「たまごっち」に関して言えば、世代を問わずみんなが一人一個「たまごっち」を持っているくらいのコンテンツに成長させたいです。そして「たまごっち」が人に寄り添うパーソナルペットとして存在する未来があれば素敵だなと思います。

安田江利果
「たまごっち」に限らず言うと、みんながびっくりするような、新しい技術を取り入れたおもちゃを作りたいです。今、私は、デジタル技術や新しい技術を融合して最先端のおもちゃを作る、ネットワークトイ企画部という部署に所属しています。

安田江利果
VRやAR、5Gなど、日々進歩する技術の中から、今までおもちゃにうまく取り入れられてなかった技術を積極的に活用して、面白いものを作っていこうという部署なので、新しい技術を取り入れ、新しい価値を持ったおもちゃを作れたらかっこいいですね。


開志専門職大学
どんなおもちゃができるか楽しみです。さて、安田さんが今までの経験を通して、高校生に伝えたいと思う、大学生のうちにやっておいた方がいいことはありますか?
安田江利果
私自身にとって大学時代は、同世代だけど、明らかに自分と考え方も生き方も違う人たちに出会う初めての機会でした。

安田江利果
社会人になると、より多種多様な考え方や生き方をしている方々に出会うことになるのですが、仕事をしていく内に、さまざまな能力や考え方の人が集まることで、より面白い商品ができるのだと感じました。たとえ一緒に仕事をする人の考え方や感覚が自分のものと違っても、柔軟な心を持つことが大事だと思うので、大学生活は自分の心の準備期間として、いろいろな人と触れ合う時期にしたら良いと思います。


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若い人たちに対してメッセージはありますか?
安田江利果
「いつでも想像力が大事」ということを伝えたいです。私は、プロデューサーという立場上、いろいろな人と関わるので、「こういう言い方をしたら相手はどう思うかな?」とか、「こういう頼み方をしたら一緒に乗ってくれるんじゃないか?」など、常に相手が自分の言葉をどう受け止めるかを考えながら仕事をしています。想像力があれば、さまざまなバックグラウンドを持つ人ともうまくやっていけるし、人生がより楽しくなるのではないかと思います。

安田江利果
また、常に少し先の未来を考えておくことも大切です。遠い先の未来のことは具体的に考えられなくても、少し先のことを考えておくだけで、いざという時に選択肢が広がりますから。


開志専門職大学
特別講師として伝えたいことはなんですか?
安田江利果
「たまごっち」やおもちゃの企画開発のことはもちろん、私は社会人6年目で、皆さんと少し歳が近いということもあるので、就活の時のこともお話ししたいと思います。


開志専門職大学
面白そうですね。特別講義を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
株式会社バンダイ
ネットワークトイ企画部
「たまごっち」企画・開発担当
特別講師 安田 江利果(やすだえりか)氏
同志社大学政策学部卒業後、株式会社バンダイに就職。営業としてデパートなどのおもちゃ売り場の営業を担当した後、「たまごっち」企画・開発担当に異動。2021年11月全国発売予定の「たまごっちスマート」の総合プロデューサーとして、企画、開発、宣伝等に携わる。

